Chapter 653
高橋美咲が気にならないはずがない
高橋花はすぐに言った。「心配しないで。お父さんは本当に用心深いから、高橋美咲に知られたくないことは絶対にバレないわ。結局、あの子も最後には素直にこっちに頭を下げてくるしかないのよ。」
高橋彩花は高橋花の言葉を聞いて、ようやく胸のつかえが少し和らいだ。
彼女は高橋美咲が絶対に気にならないはずがない、と信じていた。
その頃、高橋美咲はリビングでぼんやりと座り込んでいた。高橋彩花の言葉はきっと本当なのだろう。あれだけ自信満々で話してきたのだから。今日、九条蓮が出かけるときも、どこか様子がおかしかった。あの時からすでに胸騒ぎがしていた。
しかも、九条蓮は九条家本邸に戻ったきり、まだ帰ってきていない。それがさらに不安を募らせる。高橋彩花の挑発もあって、ますます何か大きなことが起きる予感がしてならなかった。
高橋美咲は、九条蓮が今忙しいかもしれないと思い、メッセージを送る勇気が出なかった。
少し迷った末、彼女は九条凛に電話をかけることにした。
今日はSNSで、九条凛が大阪にいると投稿していたのを見かけた。もし九条凛も大阪にいるなら、九条家で何かあった場合、彼女も戻っているのではないか。
高橋美咲は、九条凛の居場所をすでにほぼ見抜いていた。
…
その頃、九条蓮は九条凛を車で送っていた。
思いがけず、高橋美咲から九条凛に電話がかかってきた。着信表示を見た九条凛は、思わず全身の毛が逆立つほど驚いた。
「うそでしょ!」
「お兄ちゃん!美咲さんから電話きた!何かバレて、私に聞こうとしてるのかな?もし聞かれたら、どう答えればいいの?怖いよ、ううう…」
九条凛は昔から素直でいい子だった。悪いことなんてしたことがない。
唯一の悪事といえば、美咲さんをお兄ちゃんのお嫁さんにしようと画策したことくらい。まだ何も聞いていないのに、すでに罪悪感でいっぱいで、電話に出るのも怖くなっていた。
九条蓮は目を伏せ、険しい表情で黙ったままだった。
九条凛がパニックになっていると、電話は鳴り止んだ。
彼女は大きく息を吐き、心臓が本当に止まりそうなくらい怖かったと胸をなでおろした。
その時、また電話が鳴り始めた。九条凛は九条蓮を見つめて、まるで「お兄ちゃん、助けて!」と目で訴えた。
九条蓮は我に返り、画面をちらりと見てから淡々と言った。「出なさい。」
その言葉に、九条凛は震える指で通話ボタンを押した。
「美咲さん。」九条凛はできるだけ平静を装い、罪悪感を悟られないように努めた。
高橋美咲は「凛ちゃん、どうしてこんなに出るの遅かったの?もう寝ちゃったのかと思った。今忙しい?邪魔しちゃった?」と尋ねた。
「あ…ううん、全然忙しくないよ。美咲さんが用事なら、いつでも大丈夫。邪魔なんてとんでもないよ。」九条凛は笑いながら、続けて探るように「それで、美咲さん、何かあった?」と立て続けに聞いた。
九条蓮の合図で、九条凛はすぐにスピーカーモードに切り替えた。
お兄ちゃんも美咲さんが何か知っているのか気になっているようだった。でも、九条凛は大丈夫だろうと思った。美咲さんは何も知らないかもしれない。
「ううん、ただ、九条蓮がさっき九条家本邸に戻ったきり、まだ帰ってこなくて。凛ちゃんも本邸にいるのかなって思って。何かあったの?」
その瞬間、九条凛は固まった。
彼女は九条蓮を見上げて、口パクで「どうしよう?何て言えばいいの?」と訴えた。
九条蓮の目はさらに暗くなった。もうごまかしようがない。今、彼と高橋美咲に残された道は一つしかない。別れるしかないのだ。その可能性を思うと、胸が締め付けられる。
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