Chapter 648
九条家と高橋家の因縁
「今すぐ九条家本邸に戻ってこい。」九条家の大旦那様は余計な言葉を一切挟まず、それだけ言うとすぐに電話を切った。
九条蓮の気分は一気にどん底まで落ちた。
今日、高橋家の誕生日パーティーに姿を見せたことは、きっと記者たちに写真を撮られている。普段はあまり表に出ないため、正体を知らない人もいるが、本気で調べればすぐに分かる。
記者たちの手を借りて、高橋美咲が高橋家の娘だと世間に知らせ、祖父に高橋美咲への反対をやめさせたかった。
だが、まさか高橋家と九条家の間にこんな因縁があったとは思いもしなかった。
おそらく祖父は、すでに自分が高橋家の誕生日パーティーに現れたことを知っている。隠そうとしても、もう無理だ。
九条蓮の表情はさらに険しくなった。
だが高橋美咲の前では、それを一切見せなかった。ただ淡々と「うん、分かった」とだけ返事をした。
そして通話を切った。
九条蓮は表面上は何も変わらないようにしていたが、高橋美咲はずっと彼の様子を見ていたので、微妙な表情の変化を見逃さなかった。あの電話で、彼があまり嬉しくなさそうなのは明らかだった。
高橋美咲は九条蓮をじっと見つめ、何か言いたげに口を開きかけては閉じた。
どう聞けばいいのか分からない。ただ、漠然とした不安が胸に残った。
そんな彼女の表情を見て、九条蓮は自分の不安を必死に押し殺し、優しく言った。「お祖父様が九条家本邸に戻れって。ちょっと用事があるから、真壁直人に君を送らせるよ、いい?」
「えっと……」高橋美咲は少し迷った。「大したことじゃないよね?」
「うん。心配しないで。」
高橋美咲はすぐに気持ちを切り替えた。九条のお祖父様は自分のことをあまり好いていないし、一緒に行けるはずもない。九条蓮が一人で向かうのは不安だったが、どうしようもなかった。
車は九条蓮の大阪の自宅に着き、高橋美咲は車を降りた。
車内には九条蓮と真壁直人だけが残った。九条蓮は後部座席にもたれ、痛む眉間を指で押さえた。
事態はあまりにも厄介だった。本来なら早く解決策を考えたかったが、祖父に先回りされてしまい、何の準備もできていない。もう成り行きに任せて、祖父の話を聞いてから考えるしかなかった。
九条蓮は真壁直人に目を向けて言った。「九条家本邸へ。」
車は夜の街を走り抜け、街灯の光が車体に流れるように映った。
30分後、車は九条家本邸に到着した。九条蓮はドアを開けて降り、落ち着いた足取りでリビングへ向かった。
その時、九条家のリビングは明るく照らされ、九条家の大旦那様と大奥様が並んで座っていた。
二人とも表情は厳しく、嵐の前のような緊張感が漂っていた。近くの使用人たちも皆、息をひそめて動こうとしない。明おじさんは九条家の大旦那様の後ろに立ち、ため息をついた。
今日は高橋家の誕生日パーティーで、本来なら特に大きな出来事はなかったはずだった。
だが、ちょうどメディアが「高橋家と九条家が和解した」「九条家の人間が高橋家の誕生日パーティーに出席した」と報じ、九条家の大旦那様の耳に入った。
最初は、どこかの出来損ないの子孫が高橋家に媚びを売りに行ったのだろうと考え、すぐに呼び出して厳しく叱りつけるつもりだった。
まさか、そこにいたのが九条蓮本人だったとは、夢にも思わなかったのだ。
彼がさらに予想もしなかったのは、高橋美咲が実は高橋恵の娘だったという事実だった。その二重の衝撃に、九条家の大旦那様は怒りのあまり気を失いかけたほどだった。
その後、血圧の薬を飲んでようやく気を落ち着かせ、九条蓮に電話をかけた。
明おじさんは長年九条家に仕えており、家の事情を誰よりもよく知っていた。特に九条久遠のこととなると、九条家の大旦那様がいまだに息子の件をどれほど根に持っているかも熟知していた。
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