Chapter 646
今でも父さんを恨んでいるのか(続き)
「高橋美咲、父親にちょっと優しいこと言ったくらいで、ここに住めると思わないでよ!」と高橋花が真っ先に皮肉を言った。
花は、美咲が正人と話し合って仲直りし、高橋家に戻ってくるつもりだと思い込んでいた。
美咲は高橋花から良い言葉が出るはずがないと分かっていた。花はいつも勝手に妄想しては、皮肉を言ってくるのだ。
「私が高橋家に住みたいとでも?」と美咲は花を横目で見た。
美咲の嘲るような視線に、高橋花はひどく不快になった。美咲に見下されている気がしてならない。
花は鼻で笑い、「違うの?おじいちゃんの誕生日会で全部持っていって、今度は高橋家に戻るつもりなんでしょ」と言った。
美咲は静かに聞いていたが、ふっと口元をゆるめた。
半ば笑いながら「私、もう九条蓮と結婚してるの忘れた?九条家で暮らせるのに、なんでわざわざあなたたちと一緒にここに住む必要があるの?」と返した。
さっきの誕生日会で高橋彩花が九条蓮に近づこうとしたことからも、二人が九条蓮の地位に惹かれているのは明らかだった。
だからこそ、ここを突くことで、彼女たちの痛いところを攻めることができるのだ。
そう言い終えると、高橋美咲はもうこれ以上彼女たちに構う気もなくなり、外に出て庭を散歩することにした。
あの母娘と口論を続けるくらいなら、外にいた方がずっとマシだ。
高橋美咲はドアを開けて部屋を出た。
高橋美咲の去っていく背中を見送りながら、高橋花と高橋彩花は怒りで顔色を曇らせていた。
高橋花は目を動かし、高橋彩花に「彩花、部屋に戻りましょう」と声をかけた。
高橋花に何か言いたいことがあると察した高橋彩花は、すぐにうなずいて立ち上がり、一緒に部屋へ戻った。部屋に入るなり、高橋彩花は我慢できずに「お母さん、どうして私を部屋に呼んだの?」と尋ねた。
「彩花、前にお父さんの書斎に盗聴器を仕掛けておいたの。今、何を話しているのか聞いてみましょう」
それを聞いた高橋彩花は、驚きと喜びの表情を浮かべた。「お母さん、そんな準備までしてたなんて思わなかった!」
「当然よ。年の功ってやつよ」
前回、高橋正人が自分に隠れて高橋美咲を支援していたことを知った高橋花は、怒り心頭だった。そこで思いついたのが、正人の電話を盗聴すること。まさか今になって役立つとは思わなかった。
二人は受信機のスイッチを入れた。
まさか、こんな衝撃的な話を耳にすることになるとは思いもしなかった。
…
それから30分後、九条蓮が書斎から出てきた。
あたりを見回しても高橋美咲の姿は見当たらない。後で庭に出てみると、ブランコに座って必死に蚊を払っている高橋美咲を見つけた。小さくて頼りなげな後ろ姿だった。
九条蓮は大股で近づき、「美咲、どうしてここにいるんだ?」と声をかけた。
「ん?お父さんとの話、終わったの?」高橋美咲は九条蓮を見上げて、「さっき彩花さんとお母さんが嫌味ばかり言うから、ちょっと避けて外に出てきたの。まさかこんなに蚊に刺されて、腫れがいっぱいできるなんて…」と答えた。
高橋美咲は可哀想そうに手を差し出し、九条蓮の前に見せた。
九条蓮が目を落とすと、彼女の手にはいくつも腫れができていた。
「行こう」と、九条蓮は心配そうに言った。
九条蓮の表情を見て、高橋美咲は何か様子がおかしいと感じた。「どうしたの?さっきお父さん、何か言った?何かあったの?」と尋ねた。
「帰ってから話そう」
九条蓮は高橋美咲を連れてその場を離れた。
真壁直人が車を回してきた。九条蓮と高橋美咲は車に乗り込み、高橋家を後にした。
家を出てからも、高橋美咲はどうしても気になっていた。さっき高橋正人に部屋を追い出され、二人きりで何を話したのか全く分からない。しかも随分長い間話し込んでいた。
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