Chapter 641
男が奪われそうになる
高橋彩花はずっとこの機会を狙っていた。九条蓮が高橋正人と挨拶を交わし終えたのを見計らい、優雅な足取りで九条蓮の方へと歩み寄った。
高橋莉良はすでに九条蓮を見かけており、彼が高橋美咲の相手だと知っていた。
今、高橋彩花が何かを仕掛けるように歩み寄るのを見て、高橋莉良は彼女を見下し、真実で思い切り顔を叩いてやりたい気持ちでいっぱいだった。
彼女はすぐに高橋美咲を探しに向かった。
その時、高橋美咲はちょうど化粧室から出てきたところで、生理が来てしまったことに気づいた。
幸い、予備の生理用品を持っていた。宴会場に戻ろうとした矢先、焦った様子の高橋莉良が現れた。高橋莉良は美咲を見るなり手首を掴んだ。「美咲、なんでトイレにそんなに長くいたの?彩花があなたの男を狙ってるの、知ってるの!?」
高橋美咲はその言葉を聞いて、心臓が大きく跳ねた。
「えっ?」
彩花が自分の男を狙ってる?どういう意味?
「さっきまでラウンジにいたんじゃないの?もう出てきたの?」
高橋莉良はすぐに「そうよ。出てきた途端、彩花が目をつけて、今まさにアプローチしてるところよ。このままじゃ、あなたの男、取られちゃうよ!」と答えた。
高橋美咲は軽く咳払いをした。
自分と九条蓮は正式に婚姻届を出した夫婦だ。そう簡単に取られるはずがない。
それでも彼女はスマホを取り出し、九条蓮にメッセージを送った。
高橋美咲:もう出てるの?
…
その頃、高橋彩花は九条蓮のもとへと歩み寄っていた。彼女は微笑みを浮かべて「九条さん、こんにちは」と声をかけた。
九条蓮が何か言う前に、彼が目の前でスマホを取り出すのが見えた。
高橋彩花は仕方なく、彼が用事を済ませるのを静かに待つしかなかった。
九条蓮は高橋美咲からのメッセージだと分かると、すぐに返信を打った。「何も言わずにいなくなるから、誰かにいじめられたのかと心配した。出てきてほしくないのか?」
九条蓮からの返信を受け取った高橋美咲は、すぐに「私の姉の高橋彩花がそばにいるって聞いたけど?」と尋ねた。
その文面を見て、九条蓮は視線を上げて高橋彩花の方を見た。
高橋彩花は九条蓮に見つめられて一瞬驚き、恥ずかしそうにうつむいた。
まさか気づかれた…?
九条蓮はさらに返信を続けた。「うん。女の人が挨拶しに来たけど、無視した。」
九条蓮の返信を見て、高橋美咲は思わず吹き出しそうになった。心配はしていなかったが、彩花の目が節穴だとしか思えなかった。
彼女は最後にもう一通送った。「おとなしく待ってて。他の女の人と話しちゃダメ。今すぐ戻るから。」
送信が完了したのを確認し、高橋美咲はスマホをクラッチバッグにしまった。
そして高橋莉良に「行こう。戻るよ」と声をかけた。
高橋莉良は異様に興奮していた。美咲が彩花に真実を突きつける瞬間を早く見たくてたまらなかった。
もし彩花が、今誘惑しようとしている男が美咲のものだと知ったら、きっとクソでも食べたような顔をするに違いない!
…
高橋美咲からのメッセージを見た九条蓮も、落ち着いた様子でスマホをしまった。
彼は背筋を伸ばして立ち、全身から近寄りがたい冷たいオーラを放っていた。
だが高橋彩花は気にせず、さらに会話を続けようとした。
「九条さん、どうして祖父の誕生日パーティーにいらしたんですか?何かお仕事の話でも?」
九条蓮はまっすぐ前を見据え、高橋彩花には一切反応を示さなかった。
高橋彩花は、まるで温かい顔を冷たい尻に押し付けているような気分だった。これだけ話しかけても、九条蓮は一言も返してくれなかったのだ。
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