Chapter 639
再び高橋家のお嬢様へ(続き)
高橋彩花の言葉を聞いて、高橋花の苛立ちは徐々に落ち着いていった。
高橋花は高橋彩花を見つめ、しみじみと「彩花、あなたは本当にお母さんの自慢よ。ただ、恋愛運だけがちょっと足りないのが残念ね。もし素晴らしい男性が現れてくれたら、私は安心できるのに」と言った。
その時、会場の入り口でざわめきが起こった。
騒ぎを聞きつけて、みんなが一斉にドアの方を振り向いた。
スーツ姿の男性が、上品なギフトボックスを手に持って入ってきた。どうやら九条会長の誕生日を祝うために来たようだった。
その男性は端正な顔立ちで、気品と落ち着きを漂わせていた。全身からただよう高貴なオーラに、会場の若い令嬢たちは思わずうっとりし、目を輝かせていた。
入ってきたのは九条蓮だった。
高橋美咲は控室で待つように言っていたが、なかなか連絡が来ないので、いじめられていないか心配になり、結局様子を見に出てきてしまったのだった。
だが、九条蓮は自分の存在感を甘く見ていた。
彼が現れた瞬間、会場中の視線が一斉に彼に集まった。
九条蓮は場内を見渡したが、高橋美咲の姿はどこにもなかった。彼の目がわずかに細められる。
その時、高橋美咲はトイレに行っており、会場にはいなかった。
皆の視線を無視できない九条蓮は、礼儀を尽くすために前に出ることにした。
そこで彼はまっすぐ高橋家の大旦那様のもとへ歩み寄り、まずは挨拶をしようとした。
高橋彩花はこの男性を見たことがなかった。しばらく彼に視線を留めていたが、やっと目をそらし、苛立たしげに高橋花の袖を引っ張って尋ねた。「ママ、あの人誰?どこかのお金持ちの御曹司?」
九条家と高橋家は、これまでほとんど接点がなかった。九条蓮もまだ九条家を継いでいなかったため、多くの人が彼のことを知らなかった。
ごくわずかな人だけが、以前に九条家の大旦那様と一緒に彼がパーティーに出席しているのを見て、すぐにその正体に気づいた。
もともと九条家と高橋家は仲が悪いと噂されていたが、九条蓮の登場でその噂は一気に崩れ去った!
もちろん、会場には高橋彩花のように九条蓮をじっと見つめ、あれこれと正体を推測している人も少なくなかった。
そのとき、高橋彩花の隣にいた誰かが驚いて口元を押さえ、小声で言った。「ちょっと、あれ九条家の若様、九条蓮さんよ!」
高橋彩花も高橋花も、思わず固まった。
「えっ?」
「まさか、九条家の人だったなんて!」
高橋花は隣で話していた中年女性に目をやり、その人が森川夫人だと気づいた。森川グループは大阪でもそれなりの規模の会社で、森川社長夫妻はとても仲が良く、よく一緒にイベントに出席していた。
高橋花は不思議そうに尋ねた。「森川夫人、今おっしゃったのは九条家の若様のことですか?」
森川夫人は高橋花の問いにすぐ頷き、「そうよ!前に主人と一緒にパーティーに出たとき、九条家の大旦那様が自ら彼を連れて皆に紹介していたわ。きっと将来は彼が九条家を継ぐんでしょうね」と言った。
「それに、高橋家の大旦那様も以前、彼のお嫁さんを探していたって聞いたわ。」
森川夫人は話しながら、何度も残念そうにため息をついた。「はあ……うちは息子しかいないのが惜しいわ。もし娘がいたら、ぜひお嫁に出して九条家と親戚になりたかったのに。そうしたら会社ももっと発展できたかもしれないわね。」
東京と大阪はそれほど遠くはないが、やはり別の都市であり、情報の伝達もスムーズではなかった。さらに高橋家の大旦那様は高橋美咲に満足していなかったため、何か情報が入ってもすぐに抑え込んでしまった。
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