Chapter 636
ついに手強い相手にぶつかった(続き)
高橋玲奈はどこか沈んでいた。つい先ほどまで高橋良子は高橋莉良に付ききりで機嫌を取っていたのに、自分は脇に忘れられ、まるで高橋良子の娘ではないかのように扱われた。自分もれっきとした娘なのに、どうして母はこんなによそよそしいのか、理解できなかった。
実のところ、高橋玲奈は高橋良子の夫が婚外関係でもうけた娘で、高橋良子のもとへ連れてこられ、育てられただけだった。
婿養子の分際で外に女を作るとは何事かと、高橋良子は怒り、大騒ぎした。だが結局、高橋家の大旦那様を失望させないため、その件をのみ込んだ。
自分が産んだ子ではない高橋玲奈を、高橋良子が心から大切にできるはずもなかった。
その露骨なえこひいきによって、高橋玲奈の心の不均衡はますます大きくなっていった。
高橋彩花が話しかけに来たのを見て、高橋玲奈は沈んだ声で言った。「何でもない。一人でいたいだけ」
高橋彩花はひそかに高橋玲奈の表情を観察し、何気ない口調で言った。「玲奈、気づいてないの?あなたのお母さん、高橋美咲に対して、あなたよりよくしてるわ。高橋美咲のことをわざわざサプライズ扱いして、お祖父様の前で全部の注目をさらわせたのよ」
高橋彩花の言葉を聞き、高橋玲奈の目に嫉妬が浮かんだ。
先ほど高橋良子が高橋美咲と一緒に出てきたとき、高橋玲奈もひどく驚いていた。
事情を知らない者が見れば、高橋美咲こそ彼女の娘だと思っただろう。
高橋彩花は、ほんの数言で高橋玲奈の感情をかき立てられたのを見て、わずかに口角を上げた。
そして優しい声で言った。「今の高橋美咲がどれだけ得意げか見て。お祖父様まで、あの子を見る目が変わったわ。今あなたがすべきなのは、高橋美咲の化けの皮を剥がすことよ。そうしないと、この先あなたは、お母さんの目には高橋美咲以下の存在になってしまうかもしれないわ!」
高橋玲奈は拳を固く握りしめた。
そのとおりだ!
高橋彩花の言葉に心を動かされたものの、高橋玲奈はそれを表には出さなかった。ただ何気なく言った。「みんな家族でしょう。どうして互いに狙い合う必要があるの?私、お手洗いに行ってくる」
そう言うと、高橋玲奈は待ちきれない様子で背を向け、その場を立ち去った。
高橋玲奈の後ろ姿を見つめながら、高橋彩花は勝ち誇った笑みを浮かべ、冷たく笑った。
高橋玲奈がどうやって高橋美咲を陥れるのか、待ちきれなかった。楽しみで仕方がない。
誕生日の宴は、雰囲気が和らいできた。贈り物でちょっとしたハプニングはあったものの、大きな問題にはならずに済んだ。
内心で不満を感じていたのは、高橋彩花と高橋花だけだった。
高橋美咲が贈った品のおかげで、高橋家の大旦那様は古い友人たちの前で面目を保つことができた。何しろ、今や岡田家の大旦那様ですら紫雲先生の弟子が作ったお香しか使えないのに、自分は紫雲先生本人が調合したお香を使っているのだ。当然、その効果もまるで違う。
まさか高橋美咲がここまで気を配ってくれるとは思っていなかった。この子は本当に心を込めてくれたのだ。
高橋家の大旦那様が高橋美咲を見る目には、先ほどよりも明らかに優しさが増していた。
さっき高橋正人が高橋美咲を高橋グループに戻すことを提案したとき、これは悪くない案だと思った。何といっても彼女も高橋家の子どもだ。このままずっと外でふらふらしていたら、周囲の笑いものになってしまうではないか。
高橋家の大旦那様はしばらく考えた後、「正人が言い出したことだし、美咲、お前も高橋グループに戻ってきなさい」と口を開いた。
その言葉が出た瞬間、高橋彩花と高橋花の表情が同時に変わった。
高橋正人がさっきは軽い気持ちで言っただけだと思って、まだ少しは望みがあると考えていた。まさか、たった一つの安眠用のお香で、高橋家の大旦那様が本当に高橋美咲を戻すことを許すとは思わなかった。
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