Chapter 635
ついに手強い相手にぶつかった
高橋家の大旦那様は渡辺老人の言葉を聞くと、高橋彩花の贈り物を見る目にいくらか軽蔑の色を浮かべた。高橋美咲からもらった品はよほど気に入ったらしく手元に置き、一方、高橋彩花からもらったものは使用人に片づけさせた。
間違いなく棚の奥へしまわれ、二度と出されることはないだろう。
……
高橋正人は高橋美咲の姿を見ると、その目に感慨を浮かべた。
高橋美咲が戻る気になってくれるとは思っていなかった。かつて東京まで美咲を捜しに行ったこともあったが、彼女はずっと大阪へ戻ることを拒んでいた。
今回の高橋家の大旦那様の誕生日も、本当は高橋美咲に知らせようと思っていた。しかし高橋花から、今の美咲は彼に対する偏見があまりにも深く、もう二度と戻ってこないだろうから、無駄なことはしない方がいいと言われていた。
結局、高橋正人は高橋美咲に電話をかけ、帰ってくるよう頼むことはしなかった。
それでも美咲は高橋家の大旦那様の誕生日を覚えていて、自分から戻ってきた。高橋正人にとって、これ以上ない驚きだった。
彼は高橋美咲のもとへ歩み寄り、甘やかすような優しい声で言った。「美咲、やっと帰ってくる気になってくれたんだな。今こうして戻ってきたのなら、これからは高橋グループにも戻って手伝ってくれ。妹も今とても忙しい。姉妹二人で力を合わせれば、きっと会社をもっとよくしていける」
高橋正人が言い終えると、高橋花と高橋彩花は同時に顔色を変えた。
ようやく高橋美咲を追い払ったというのに、高橋正人はたった一言で彼女を戻そうとしている。それでは、自分たちはいったい何だというのか。
高橋彩花は、高橋正人が自分を忙しいと言うのを聞き、持ち上げた石で自分の足を潰したような気分になった。
もともとは高橋正人に甘え、忙しいと訴えることで同情を引き、もっと可愛がってもらうつもりだった。まさか高橋正人が、高橋美咲を連れ戻そうとするとは思っていなかった。
高橋美咲を会社に入れ、自分を不愉快にさせるなど、絶対に許せない!
高橋良子は高橋花と高橋彩花の表情が変わるのを見て、ようやく鬱憤が晴れた気がした。普段はあれほど傲慢なのに、ついに手強い相手にぶつかったのだ!
わざわざ東京まで飛び、高橋美咲を連れ戻した甲斐があった。
高橋莉良と高橋良子の得意げな表情を見て、高橋彩花はことさら腹を立てた。
あの高橋莉良は、以前自分に取り入っていた頃、あの手この手で機嫌を取り、甘い言葉を並べては、高橋美咲を陥れるのまで手伝っていた。それなのに今では手のひらを返し、高橋美咲と同じ側についている。
まさに風向き次第で立場を変える、節操のない人間だった。
だが、高橋彩花は高橋莉良と長い付き合いがあり、彼女がどんな人間かも知っていた。高橋莉良はとても操りやすい。以前も何度となく利用し、高橋美咲を陥れるのを手伝わせてきた。
過去にそれだけのことがあったのだから、高橋美咲が高橋莉良に対して本当に何の恨みも持っていないはずがない。
ただし、自分で手を下すつもりはなかった。誰かに手伝わせなければならない。
そのとき、高橋彩花の視線が部屋の隅にいる一人の女へ止まり、口元がわずかに吊り上がった。
高橋家で高橋美咲と対立していたのは、自分だけではない。競争があるところには必ず争いが生まれる。高橋莉良には、高橋玲奈という妹もいた。二人は昔から折り合いが悪く、そのうえ高橋良子が高橋莉良ばかりを可愛がるため、高橋玲奈はますます姉を恨むようになっていた。
今、高橋莉良を始末したいのなら、自分で動く必要などまったくない。
高橋玲奈をけしかけ、自分の代わりに手を下させればいい。そうして自分は、漁夫の利を得るのだ!
皆が目を離している隙に、高橋彩花はシャンパンのグラスを手に、近くにいる高橋玲奈のもとへ歩いていった。
「玲奈、どうして一人でいるの?」
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