Chapter 632
高橋美咲を呼び出す時が来た(続き)
「プレゼント、忘れないで。」九条蓮は手に持っていた品を差し出した。
その時になって高橋美咲は、彼が自分に持たせてくれた誕生日プレゼントのことを思い出した。
さっきはうっかり忘れるところだった。九条蓮が声をかけてくれなければ、手ぶらで宴に出て恥をかくところだった。高橋彩花が用意したのは紫雲先生の品だ。
でも九条蓮がこのプレゼントを用意したのは、出発の前日だった。
その後、開けて中身を確認する時間もなく、高橋美咲は九条蓮を信じて、そのまま宴に持っていくことにした。
正直なところ、中身が何かは全く分かっていない。
高橋美咲はプレゼントを手に取り、高橋莉良と一緒に控室を出た。
「行こう。」
二人が外に出ると、高橋莉良はついに我慢できずに「美咲、あんたの彼氏って何してる人?すごくカッコいいし、オーラもあるし、もしかしてお金持ちの御曹司だったりする?」と聞いた。
高橋莉良の言葉にあからさまな探りが混じっているのを感じ、高橋美咲は冷たく口元を歪めた。
九条蓮が特別隠すべき存在というわけではないが、彼を使って見せびらかすつもりもないし、ましてやこの従姉妹・高橋莉良に話すこともない。
「まあ、普通にちゃんとした仕事してるよ。莉良こそ、今彼氏いるの?」
彼氏の話題になると、高橋莉良の表情が一変した。すぐに無理やり笑顔を作ってごまかした。
高橋良子が見つけてきたのは、いわゆる金持ちの二世だった。見た目は悪くないが、女遊びが激しくて有名で、浮気現場を何度も押さえては疲れ果てている。それでも周囲に笑われないよう、無理して仲睦まじいふりを続けている。
さっき、高橋美咲の夫がどれだけ優しく気遣っていたかを見て、心の底から羨ましくなった。
もしあの男が本当にお金持ちだったら、嫉妬で気が狂いそうだ。
二人は話しながら、そのまま一緒に宴会場へと入っていった。
高橋家の大旦那様と大奥様が上座に座り、周囲では皆が気を配りながら控えていた。
多くの人が心を込めて用意した誕生日の贈り物を差し出していた。「高橋家の大旦那様、こちらは私どもがご用意した品です。東海のように広いご多幸と、南山のように長いご長寿をお祈り申し上げます。」
高橋花が高橋彩花に目配せし、早く前に出るよう合図した。
高橋彩花はすぐに一歩前に出て、贈り物を取り出した。「お祖父様、私もプレゼントを用意しました。気に入っていただけると嬉しいです。」
そう言い終えると、高橋彩花は自分で丁寧に用意した精巧な箱を取り出した。
「お祖父様、これは心を落ち着かせて安眠を促すお香です。最近、眠りが浅いと伺ったので、特別に調合してもらいました。どうかお気に召しますように。」
高橋花もすかさず横から口を挟んだ。「お父様、彩花は本当に心を込めて選んだんです。このお香も、お父様が夜ぐっすり眠れるようにと、わざわざ探しに行ったんですよ。」
高橋彩花は控えめな表情で「お母さん、私はただお祖父様の健康が心配なだけです」と言った。
高橋家の大旦那様の顔に穏やかな表情が浮かんだ。明らかに高橋彩花の贈り物に満足している様子だった。
近くにいた何人かが箱を見て「これは本当にいいものだ!」と感嘆した。
誰かがその発言者に不思議そうに尋ねた。「どういう意味ですか?」
「大阪に紫雲先生というお香の調合で有名な方がいるのはご存知ですよね?」
「もちろん知っていますが、紫雲先生は仏門に入られて、もうずいぶん前に調合をやめてしまったはずです。今やお金では手に入らない逸品でしょう?」
「その通りです。あの箱に紫雲先生の印がありました。高橋彩花さんが高橋家の大旦那様に贈ったのは、紫雲先生の手によるお香ですよ!」
You might also like




