Chapter 62
九条社長は本当にブサイクらしい(続き)
面倒そうな顔で「会わない。忙しいと伝えろ」と言い放った。
会議室では、九条悠真が九条蓮は都合がつかないと聞き、顔色を曇らせた。
真壁直人が出ていくと、九条悠真は手にしていたノートパソコンを机に叩きつけ、全身から怒りをあらわにした。
こんなに待たされて、毎回九条蓮は都合が悪いと言う。わざとからかっているのかもしれない。
九条蓮が偉そうにしているのは、結局あの老人の寵愛に頼っているからじゃないか。
自分が桜井奈緒と結婚すれば、高橋家も自分を未来の婿として認めてくれる。そうなれば、あの老人の前でも十分に存在感を示せるはずだ。もう九条蓮の態度に我慢する必要はなくなる。
九条悠真は怒りを抱えたまま会議室を後にした。これ以上九条蓮に時間を使うのはやめ、桜井奈緒に力を注ぐことに決めた。
高橋美咲がスケッチをしていると、突然何人かが華やかに現れた。そのうちの一人は人の半身ほどもある大きなバラの花束を抱え、他の人たちは九条インターナショナルのエントランス前に花びらでハート型を作り始めた。
すぐに多くの人が集まり、羨望の声が次々と上がった。
「わあ、誰かが告白するのかな?」
「こんなにたくさんのバラ、すごくロマンチック」
「告白される女の子、絶対幸せだよね。誰がこんな派手なことを?独り身にはつらいわ!」
そんな中、桜井奈緒が階段を降りてきた。下に広がるバラの海を見て、思わず口元を手で覆い、感動で泣きそうになっていた。
九条悠真が脇から現れ、ゆっくりと桜井奈緒のもとへ歩み寄る。
彼女の前で立ち止まると、九条悠真はスーツのポケットからベルベットの箱を取り出し、開けて片膝をついた。
九条インターナショナル社長室。
真壁直人はデスクの前に恭しく立ち、階下の状況を九条蓮に報告していた。
「九条社長、九条悠真様が9,999本のバラを注文し、九条インターナショナルのエントランスで桜井奈緒さんにプロポーズしています。ものすごく盛大でロマンチックな光景です。」
九条蓮は漆黒の瞳を上げた。「ロマンチック、か?」
「ええ…さっきから周りの人たちも羨ましいって言ってました。女の子なら誰でも憧れるんじゃないでしょうか。それに高橋美咲さんも下で見ているようです。」
真壁直人の言葉を聞き、九条蓮の目に思案の色が浮かんだ。
何にせよ、高橋美咲は自分の“人間”だ。誰かにいじめられて、黙っていられるはずがない。
低い声で言った。「九条インターナショナルはプロポーズする場所じゃない。」
真壁直人は長年九条蓮の側に仕えてきたため、九条蓮の一瞥だけで何を考えているか察することができた。その表情はまるで人を凍りつかせるほど冷たく、九条悠真の公開プロポーズにかなり不機嫌なのがすぐに分かった。
真壁直人はハッとしてすぐに言った。「承知しました。すぐに追い払ってきます。」
九条蓮がそれを制した。「待て。」
真壁直人は我に返り、困惑した様子で九条蓮を見た。「九条社長、他にご指示は?」
その頃、階下では盛大なプロポーズが続いていた。
九条悠真は桜井奈緒の前で片膝をつき、愛情を込めて言った。「奈緒、もうすぐ婚約するけど、ちゃんとプロポーズしたことなかったよね。今日、改めてプロポーズする。俺と結婚してくれる?」
「もちろん!」桜井奈緒は幸せそうに微笑んだ。
九条悠真は箱から指輪を取り出し、桜井奈緒の指にはめた。
桜井奈緒は自分の手に輝く大きなダイヤを見て、口元が緩みっぱなしだった。
なぜ急にこんなサプライズをしてくれたのか分からなかったが、本当に嬉しかった。その時、ふと視線の端に高橋美咲の姿が映り、桜井奈緒の目に驚きが浮かんだ。
高橋美咲は柏木健人にあんな目に遭わされたのに、隠れているどころか、九条インターナショナルにまで来るなんて?
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