Chapter 619
お見合いでの出来事
西園寺莉央は九条凛の美しい顔立ちを見て、嫉妬の色を隠せなかった。
どうして貧乏人のくせに、あんなオーラがあるのよ——。
女の嫉妬なのか、家柄で見下しているはずなのに、西園寺莉央はどうしても九条凛を標的にしたくなった。彼女は冷ややかな顔で鼻で笑い、「ブスね。そりゃあ、あなたが振るのも当然だわ。どうせ今も彼氏なんていないんでしょ?」と吐き捨てた。
「いや、違う。」森岡千隼は何かを思い出したようにすぐに否定し、「でも心配しないで。もし彼女がまだ俺に未練があっても、絶対に戻るつもりはない。俺が好きなのは莉央だけだ」と言い切った。
西園寺莉央を喜ばせるために、森岡千隼はさらに必死に取り繕った。「莉央みたいな素敵な女性に出会ったから、あんな女とは別れたんだ。莉央、あんなの気にしなくていい。君とは比べものにならないよ。」
森岡千隼がここまで媚びてくるのを見て、西園寺莉央は勝ち誇ったように口元を吊り上げた。
そして九条凛に軽蔑の視線を投げ、「そうよね」と言い放った。
九条凛にしがみつかれるのを恐れて、森岡千隼は小声で「他の店に行こう。ここにいない方がいい」と急かした。
西園寺莉央も「そうね。こんな人見てたら食欲なくすわ」と言った。
そう言い残して、二人はドアを開けて出て行った。
九条凛「……」
なんなの、あれ!
もう森岡千隼に未練なんてなかったはずなのに、さっきの二人を見て、やっぱり胸が痛んだ。
自分はずっと九条家の娘だったのに、それを隠してまで森岡千隼に劣等感を抱かせないようにしてきたのに——。
結局、自分のしてきたことなんて全部、滑稽なだけだった!
森岡千隼のことは四年間も好きだった。そのために、食費も日用品もすべて節約して、贅沢なんて一度もしなかった。森岡千隼は「凛には悪いと思ってる。絶対に将来幸せにするから」とまで言ってくれていたのに。
それなのに、九条ホールディングスに入ってから、どれだけ経った?もう他の女とくっついて、自分を捨てた!
この四年間の苦労が、今では全部バカみたいに思えてきた。
九条凛が傷ついた気持ちで呆然としていると、外から背の高い男性が入ってきた。彼は九条凛の前で立ち止まり、低い声で「ごめん、会社で急用が入って。どれくらい待った?」と声をかけた。
九条凛の目はまだ少し赤かった。顔を上げてみると、そこにいたのは思いもよらない人物だった。
しばらくして、ようやく驚きの声を上げた。「なんであなたなの!」
神谷海斗は少し困ったように口元を緩め、「うちの家族がうるさくてさ」と苦笑した。
つまり、九条夫人が九条凛に用意したお見合い相手は、神谷海斗だったのだ!
九条凛は九条蓮の友人である神谷海斗に、特別な感情を抱いたことはなかった。ずっと兄のように接してきた。神谷海斗が物足りないのではなく、むしろ神谷海斗が良すぎて、自分には釣り合わないと思っていたのだ。
彼があまりにも優秀すぎて、自分なんか神谷海斗には釣り合わないと感じていた。だから当然、彼のことを考えたことすらなかった。
九条凛は、自分のことを何もできないお嬢様だと思っていた。食べて飲んで遊ぶ以外、これといった特技もない。
神谷海斗は子供の頃からずっと優秀で、まるで小説の中の人物みたいに賞や栄誉を総なめにしてきたと聞いていた。しかも家柄まで加われば——
東京や大阪の女性たちが彼を選び放題と言っても過言ではない。
神谷海斗に今まで女性がいなかったのは、神谷家が理想が高すぎるからだと、ずっと思っていた。
「まあ、座って話そうか。」神谷海斗はごく自然に微笑み、九条凛の手からバッグを受け取った。
九条凛はまだ少しぼんやりしていたが、彼に導かれるまま席に着いた。
「何を飲む?」神谷海斗が自然に尋ねる。
「なんでもいいよ。」
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