Chapter 605
高橋美咲の行方を追って
九条蓮は少し眉をひそめた。「渋滞にでも巻き込まれているのかもしれない。」
そう思いながら、彼は携帯電話を取り出して高橋美咲に電話をかけた。コールは繋がったが、呼び出し音が鳴り続けるだけで応答はなかった。
もしかしたら運転中で電話に出られないのかもしれない。
九条蓮はあまり気にせず、携帯をしまって静かに待つことにした。
さらに15分が経過したが、高橋美咲の姿は一向に現れなかった。さすがの九条蓮も違和感を覚え、胸の奥に不穏な気配が広がり始めた。
高橋美咲に何かあったのではないか。
九条蓮の目には焦りの色が浮かび、再び携帯を取り出して高橋美咲に電話をかけた。だが今回も応答はなかった。
ただの渋滞なら、高橋美咲が電話に出ないはずがない。
本当に何かあったのかもしれない。
九条蓮の表情がみるみる険しくなり、冷たい威圧感が周囲に漂い始めたのを感じて、真壁直人も嫌な予感を覚えた。
ちょうどその時、高橋美咲の携帯が誰かに取られた!
「もしもし。」年配の女性の声が電話越しに聞こえてきた。
「あなたは誰ですか?」九条蓮は眉をひそめて尋ねた。
「道端でゴミを拾っていたら、ここに停まっている車を見つけたの。窓ガラスは全部割れていて、携帯がずっと鳴っていたから出てみたんだけど。あなた、この車の持ち主?」
その言葉を聞いた瞬間、九条蓮は高橋美咲に何かが起きたことを直感した。
彼の目つきが鋭くなり、周囲の空気が一変した。
「真壁直人、今すぐ東京を封鎖して高橋美咲を探せ!」
「はい、九条さん。」
真壁直人はすぐにあらゆる手段を使って高橋美咲の行方を全力で捜索し始めた。東京中が大騒ぎとなり、誰もが九条家が女性を探していることを知ることとなった。
これほど大規模な捜索に、人々はその女性の正体に興味を持たずにはいられなかった。いったい誰なのか、九条家をここまで動揺させる女性とは——。
…
その頃、九条インターナショナルにいた佐伯葉月も、九条蓮が人探しをしているという情報を受け取っていた。
彼女はオフィスで悠々と座り、スマホで世間を騒がせるニュースを眺めながら、口元が緩みっぱなしだった。高橋美咲を陥れ損ねた時の鬱憤が、ようやく少し晴れた気分だった。
今朝、柳小路から相談を受けた時、彼女はこの完璧な計画を思いついたのだ。
柳小路にアイデアを授け、岩瀬一真を高橋美咲にけしかけるよう仕向けた。
岩瀬一真は高橋美咲に人生をめちゃくちゃにされた。何も失うものがない人間ほど恐ろしいものはない——どんな手段で高橋美咲に報復するのか。
九条蓮が高橋美咲を見つけた時には、きっと彼女はすでにボロボロにされているだろう。その時こそ、九条蓮は高橋美咲を軽蔑するに違いない。
自分がここまで冷酷非道なのは責められない。悪いのは、九条家の奥様の座を邪魔した高橋美咲の方だ。
真壁直人は高橋美咲の車の場所を突き止め、さらに岩瀬一真の車も発見した。
岩瀬一真が高橋美咲を自分の車に連れ込む様子を確認した時、九条蓮の全身から放たれる空気が一気に冷え込んだ。隣にいた真壁直人でさえ、身の毛もよだつほどだった。
その後、防犯カメラの映像を辿り、二人が郊外の廃ビルに入っていくのを突き止めた。中には監視カメラがなく、岩瀬一真が高橋美咲を連れて入る姿がかろうじて映っていたが、すぐに二人とも姿を消してしまった。
九条蓮の表情はすでに鬼神のごとく険しくなり、まるで閻魔が天地を滅ぼさんとするかのようだった。
真壁直人はごくりと唾を飲み込み、恐る恐る声をかけた。「九条さん、高橋さんは無事かもしれません。」
九条蓮は唇を固く結び、何も言わずに車に乗り込んだ。
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