Chapter 602
誰にやれと言われたのか(続き)
佐伯葉月の沈んだ様子に比べ、柳小路は怒りで顔を真っ赤にしていた。
彼女は椅子から立ち上がり、歯ぎしりしながら怒鳴った。「どうなってるのよ!なんで金城茉莉奈が現れるの?岩瀬一真まで私が黒幕だって言い張ってるし。これじゃあ……」
柳小路が言い終わる前に、彼女の携帯が鳴った。
「もしもし。」
「柳小路さん、岩瀬一真の件ですが……」
相手が話し終える前に、柳小路は乱暴に電話を切った。
だが一度切った後も、二度、三度と違う番号から次々に電話がかかってきて、携帯は鳴り止まなかった。
ついに柳小路は携帯の電源を切り、ようやく世界が静かになった。
自分の行動がすべて明るみに出て、皆が注目している今、他のことまで掘り返されたらどうしよう。柳小路はそう考えて青ざめた。
「葉月、助けてよ!」
柳小路は憤然と言った。「私が岩瀬一真に協力を持ちかけたのは、あなたのために高橋美咲を潰すためだったのよ。こんな大事になったら、九条インターナショナルでの私の立場だって危ういじゃない!」
佐伯葉月は携帯画面に次々と流れる柳小路への非難の嵐を見て、眉をひそめ、険しい表情を浮かべていた。
今、彼女が一番気にしていたのは、もし九条家の大旦那様にこのことが知られたら、どうなるのかということだった。
…
同時刻、大阪の九条家本邸。
九条蓮は九条家の大旦那様と大奥様と一緒に、新商品の発表会を見ていた。
最初、九条家の大旦那様は高橋美咲が岩瀬一真と揉めているのを見て顔色を曇らせ、怒りを露わにしたが、その怒りをぶつける前に、事態が思わぬ方向へ転じた。
まさか、すべてが誰かの裏工作だったとは思いもしなかったのだ。
九条家の大奥様は胸を撫で下ろしながら言った。「だから言ったでしょう、美咲さんはそんな子じゃないって。誰かが高橋美咲を陥れたから、こんなことになったのよ。もう全部はっきりしたんだから、美咲さんを罠にかけた人間は絶対に許しちゃだめよ!」
九条蓮がこの時まだ大阪に残って二人の年長者と一緒にいたのは、二人が誤解しないように自分で説明したかったからだった。
これで一件落着し、ようやく肩の荷が下りた。
「お祖父様、お祖母様、美咲は本当にいい子です。この件はもう解決しましたから、今後は何でも鵜呑みにせず、しっかり見極めてくださいね。」
そう言って、彼は立ち上がった。「僕は先に東京へ戻ります。」
九条蓮が去った後、九条家の大奥様はようやく九条家の大旦那様を見て言った。「あなたも見たでしょう。美咲さんは本当に素晴らしい子よ。あれだけ多くの人に囲まれても、全く動じなかったじゃない。まさにあなたが望んでいたお嫁さんじゃない?」
そう言いながら、ふと思い出したように続けた。「それに比べて、佐伯家のお嬢さんは、まだ何も確定していないうちから私たちのところに来て、いい加減なことを言っていたわ。もし真相が明らかにならなかったら、私たちも美咲さんを誤解していたかもしれないのよ!」
九条家の大奥様は、心の中ではまだ佐伯葉月のことも気に入っていた。
だが高橋美咲が今回の件をうまく収めた今、当然、九条家の大旦那様の前では美咲のことを褒めておきたかった。
九条家の大旦那様は目を細め、先ほどの高橋美咲の落ち着いた態度を思い返していた。
あの女は、思っていた以上にしっかりしていて冷静だった。自分のようにうるさい人間でも、文句のつけようがないほどだ。
ただ、家柄だけがやはり少し物足りない……
もともとメゾン・ヴェルヌの新商品発表会にはあまり注目が集まっていなかったが、柳小路の妨害があったことで逆に話題となり、思いがけない効果を得ることになった。
まさに災い転じて福となす、というやつだ。
その朝早く、九条インターナショナルの上層部から通達が出た——柳小路は重大な規律違反により会社を解雇された!
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