Chapter 601
誰にやれと言われたのか
だが、さっき岩瀬一真自身が出てきてこう言ったのだ。高橋美咲を陥れたのは自分であり、この件は彼女とはまったく無関係だと。
もし岩瀬一真の妻が現れなければ、彼らは完全に彼に騙されていたかもしれない。
先ほどまで騒ぎ立てていた記者たちは、状況が一変したのを見て、何かがおかしいと感じた。すぐにこっそりその場を離れようとした。
その時、不意に水城圭介がどこからともなく現れ、黒服のボディガードを何人も引き連れていた。
冷たい表情で彼は言った。「今さっきデマを流した者たちを全員確保しろ。九条インターナショナルの名誉を毀損した。うちの法務部が責任を持って訴訟を起こす!」
柳小路から金をもらって騒ぎを起こしに来た連中は、これを見て肝を冷やした。
柳小路は、今回の件が大きくなれば高橋美咲には誰も助けてくれる人がいなくなり、下手をすれば解雇されるかもしれないと言っていた。
だからこそ彼らはやったのだ。まさか岩瀬一真の妻が現れて、こんなふうに自分たちまで罰せられるとは思ってもみなかった。九条インターナショナルの法務部は伊達ではない。相手を破産させるほど訴訟を起こすし、九条インターナショナルが絡む争いで負けたことは一度もない。
今、その圧倒的な力が自分たちに向けられているのだ。まさに一方的な蹂躙ではないか。
すぐに何人もの顔色が真っ青になった。
特に陣内彬は恐怖に満ちた顔で、考えれば考えるほど震えが止まらなくなり、ドサリと高橋美咲の前にひざまずいた。「高橋部長、全部僕が悪いんです。お金のためにやっただけで、本当はあなたのことなんて何も知りません。全部あの人に言われたんです!」
高橋美咲は彼を見下ろして静かに言った。「誰にやれと言われたの?」
実は高橋美咲も誰がやったか分かっていたが、今はまだ記者が大勢いる。わざと問いただして、その人物の悪事を皆の前で暴こうとしたのだ。
陣内彬はもう何も隠す勇気はなかった。ただ自分の罪を少しでも軽くしたい一心だった。
「そ、それは柳小路です!」
森川茉莉はこれを聞いて満足げに鼻で笑い、大きな声で言った。「皆さん聞きましたよね?柳小路が黒幕です。彼女は今、九条インターナショナルのNiaのデザイナーで、メゾン・ヴェルヌとNiaは販売競争中。柳小路はそのせいでわざと高橋部長を陥れたんです。高橋部長は岩瀬一真とは一切関係ありません!」
これを聞いて、記者たちもようやく事情を理解した。
これは九条インターナショナル内部の競争だったのだ。危うく自分たちは手玉に取られるところだった!
……
その頃、柳小路と佐伯葉月はオフィスにいた。
ついさっきまで高橋美咲が恥をかく様子を楽しそうに見ていたが、まさか状況が一気にひっくり返るとは思ってもみなかった。
岩瀬一真の妻が彼女たちの元にやってきて、すべてを暴露したのだ。
しかも、柳小路が裏でやっていたこともすべて明るみに出てしまった。
柳小路はなぜこんなことになったのか分からなかったが、佐伯葉月には分かっていた。
彼女の表情は暗くなった。さっき金城茉莉奈が言っていたのを聞いたのだ。九条社長が自分たちのところに現れた、と。
九条蓮!
またしても九条蓮が高橋美咲を助けた。彼は高橋美咲のために金城家まで出向いたのだ。本来なら、高橋美咲に他の男との怪しい関係があると知った時点で、すぐに別れるのが普通の反応ではないのか。
だが今となっては、すべてが逆転してしまったようだ。
佐伯葉月は拳を握りしめ、手のひらが痛むほどだった。
こんな形で失敗するなんて、とても受け入れられない。これは絶対に成功するはずの計画だったのに!
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