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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 60 - どうして結婚してるなんてあり得るの?

Chapter 60

どうして結婚してるなんてあり得るの?

幸い、全てを捧げる前に彼の本性を知ることができたのは、自分の運が良かったのだと思う。九条悠真と結婚する前に、彼の裏の顔を見られて本当に良かった。

九条悠真への最後の感情も、もう完全に消え去っていた。

できることなら、もう二度と関わりたくない。彼は桜井奈緒が好きなら、ずっと桜井奈緒と一緒にいればいい。

「いくら否定しても無駄だ。あれだけ長く一緒にいたんだ、俺がお前のこと分からないはずがないだろ?」九条悠真は、すべてを知っているかのように嘲笑った。

「変人。もう話す気もない。」

高橋美咲は呆れたように目をそらし、そのまま足早に立ち去った。

なんて運が悪いんだろう。どうして以前は九条悠真がいい男だと思っていたのか。

「九条社長。」

高橋美咲は男性の声を聞き、体が一瞬固まった。

九条社長?

もしかして、あの九条蓮?

声のした方を見た。

九条インターナショナルのエレベーターが開き、数人のスーツ姿の男性たちが出てきた。

九条蓮は、さっき一目で高橋美咲を見つけていた。もう避けるのは遅かった。

高橋美咲はその場に立ち尽くし、目を見開いて彼らを見ていた。

九条蓮の視線が鋭くなり、今しがた声をかけたアシスタントを冷たく一瞥した。アシスタントは自分が何を間違えたのか分からず、無垢な顔で黙り込んだ。

その時、もう一人のアシスタントが空気を察し、すぐに他の者たちを引っ張って離れていった。

高橋美咲は首を伸ばして、九条蓮の後ろに去っていく人たちを見送った。

そして、背の高いすらりとした人影が視界を遮るまで、高橋美咲はそのまま見ていた。彼女はようやく視線を戻し、目の前に立つ九条蓮を見上げた。

彼は眉をひそめ、少し険しい表情をしていた。

もう正体を隠し通すのは無理そうだったが、別に構わない。高橋美咲とまたルールを決め直せば、この関係は続けられる。

九条蓮は深く息をついた。「高橋美咲……」

高橋美咲は不思議そうに言った。「九条蓮、凛ちゃんはあんなに可愛いのに、あの九条社長ってちょっとブサイクじゃない?遺伝子の突然変異とか?」

「……」

言ってから、高橋美咲はここで人の悪口を言うのはまずいと気づき、軽く咳払いして気まずそうに笑った。「今のは冗談だからね。本人には言わないでよ?」

九条蓮は何も答えなかった。

高橋美咲は続けた。「あ、そうだ。なんでここにいるの?今日は九条社長を会社に連れてきたの?」

その言葉を聞いた瞬間、九条蓮の表情が変わり、眉間に深いしわが寄った。

ようやく違和感の正体に気づいた——高橋美咲は彼のことを認識していなかった!

さっきのアシスタントを九条社長だと思っていたのか?

九条蓮は何気なく尋ねた。「さっき九条社長を見たのか?」

高橋美咲は少しぼんやりと首を振り、「ううん、ちゃんと見てない。これから見ようと思ったら、あなたが前に立っちゃったから。」と答えた。

実際、九条蓮の存在感が強すぎて、最初に彼に目がいき、他の人たちに気づいたのはその後だった。本物の九条蓮に気づいた時には、もうよく見えなかった。

九条蓮の張り詰めていた心が緩み、口元にうっすらと微笑みが浮かんだ。「次はちゃんと見せてあげるよ。」

ちょうどその時、真壁直人が柏木健人の対応を終えて九条インターナショナルに戻ってきた。

入ってすぐ、九条蓮の後ろ姿が目に入り、高橋美咲は完全に隠れていたので、真壁直人は挨拶しようと「社……ごほ、ごほ、ごほ……」と声をかけた。

九条蓮が少し動き、高橋美咲が見えた瞬間、真壁直人は肝を冷やした。「社長」と言いかけた言葉を無理やり飲み込み、咳き込んで顔を真っ赤にした。

高橋美咲は驚いて目を見開いた。「あなた!」

高橋美咲は真壁直人を見て、不思議そうに尋ねた。「あなたって、あの出前の人じゃなかった?」