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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 597 - どうやら相沢紫苑に恋をしたらしい

Chapter 597

どうやら相沢紫苑に恋をしたらしい

その日、水城圭介が自分の状況を話したのは、森川茉莉と相沢紫苑だけだった。あの日は気持ちが沈んでいたから、つい口にしてしまったのだ。今はもう解決している。

あちこちで愚痴ばかりこぼす男にはなりたくなかった。そんな人間は軽蔑されるだけだ。

だから水城は笑顔で「いや、どこでご飯食べようか悩んでただけ」と答えた。

ここ数日、相沢紫苑が水城に食事を届けてくれていた。その間に少しずつ会話も増え、彼女が食事を届ける理由も知っていた。水城は食べ物にうるさく、胃腸も弱い。油断するとすぐお腹を壊してしまうのだ。

「あ、そうだ。今日のお弁当、ちょっと多めに作っちゃったから、一つあげるね」

そう言いながら、相沢紫苑は手に持っていたランチバッグを水城に優しく手渡し、「私、これから残業だから先に行くね」と続けた。

そう言い終えると、手を振ってエレベーターへと歩いていった。

水城は手の中のランチバッグを見つめ、胸の奥に言葉にできない感情が湧き上がるのを感じた。温かな気持ちが、じんわりと全身に広がっていく。

さっき柳小路でばったり会ったときは、気分が重くて沈んでいた。でも、相沢紫苑の登場は、まるで暗闇に差し込む一筋の光のようだった。

水城はだんだんと、自分が相沢紫苑に惹かれていることに気づき始めていた。

それは、毎日食事を届けてもらう中で自然と芽生えたものかもしれないし、何度も心を動かされたからかもしれない。強くて前向きなこの女性に、心を奪われてしまったのだ。

だが、柳小路と別れたばかりで、すぐに相沢紫苑にアプローチしたら、軽蔑されるのではないか。

水城はランチバッグをぎゅっと握りしめ、心の奥底にその想いをそっと押し込めるしかなかった。

前回、九条蓮が出張に行くと言ってから、今日になってもまだ戻ってきていなかった。今回の件で九条家の大旦那様が高橋美咲に強い不満を持っていたため、数日間そばにいて気持ちをなだめていたのだ。

いずれにせよ、金城家との問題はすでに片付いていたので、もう何か起きる心配はなかった。

高橋美咲も自分の仕事で忙しくしていた。夜になると、二人は電話で少し話して、距離を縮めていた。

こんな日々は、忙しくも充実していた。

その夜、高橋美咲はベッドに横になりながら、九条蓮と電話で話していた。

「お仕事の方はどう?」と彼女が尋ねる。

「だいたい終わったよ。あと数日で戻れる。美咲は俺のこと、恋しかった?」

九条蓮にそう言われて、高橋美咲は思わず顔が赤くなった。こんなことを聞かれるとは思っていなかった。

今まで、こんな会話はしたことがなかった。

布団の中で少し身をよじり、口元をほころばせて「うん、恋しかった。だから早く帰ってきて。私も記者会見が終わったらしばらく暇になるから、一緒に遊びに行こう」と笑顔で答えた。

そのとき、大阪のとある部屋の廊下で、九条蓮は背筋を伸ばして立っていた。高橋美咲の言葉を聞くと、優しい表情になり、低い声で「うん、帰るまで待ってて」と返した。

この二日ほど、九条家の大旦那様の機嫌は良くなっており、高橋美咲の件についても、もう強くは言わなくなっていた。

あえて見て見ぬふりをしているようだった。このままうまくやれば、きっと問題は起きないだろう。

高橋美咲が岩瀬一真のことを心配しないよう、九条蓮は「岩瀬一真のことは心配しなくていい。何があっても俺がいる。美咲が傷つくようなことは絶対にさせない」と優しく伝えた。

少し慰めのようにも感じたが、高橋美咲はその言葉に深く心を打たれた。

二人は眠気に勝てなくなるまで話し続け、ようやく電話を切った。

あっという間に夜が明け、翌日、メゾン・ヴェルヌの新作発表会が五つ星ホテルで開催された。