Chapter 592
どれくらい自信があるの?(続き)
森川茉莉はふと、水城圭介が病院で「自分は九条徹じゃない」と言っていたことを思い出した。
もしかしたら本当に九条徹じゃなかったから、柳小路は正体を知って彼を捨てたのかもしれない。
相沢紫苑もまた複雑な気持ちで水城圭介を見つめていた。森川茉莉のような疑念ではなく、単に柳小路とは昔から折り合いが悪かったし、水城圭介がかつて柳小路と付き合っていたと聞いて、なんとなく心がざわつき、何を言えばいいのか分からなかった。
どうしてこんな女を好きになったのだろう。
二人の表情を見て、水城圭介は深く息を吐いた。「とりあえずここを離れよう。それから話そう。」
三人は岩瀬一真のホテルを出て、夜の屋台に向かった。
串焼きをいくつか頼み、水城圭介は酒を一本買った。相沢紫苑は今の体で酒を飲んで大丈夫かと心配だった。
だが水城圭介は気分が最悪で、アルコールで神経を麻痺させ、心の重苦しさを紛らわせたかった。
水城圭介は酒を半分ほど一気に飲み干し、ようやく柳小路との一部始終を語り始めた。
柳小路が最初に近づいてきた時から、後に彼女の気遣いや優しさに心を動かされたことまで。水城圭介は幼い頃から孤児で、心の奥底では強い不安を抱え、ちょっとした優しさにもすぐに心を許してしまった。だから、あの優しく思いやりのある柳小路にすぐ惹かれてしまったのだ。
だが、自分が九条徹ではないと明かした途端、柳小路の態度が百八十度変わるとは夢にも思わなかった。
そして今や、柳小路はかつての思いやりがあって理解のある少女とはまるで別人のように変わってしまっていた。さっきの女性は高圧的で理不尽で、彼の記憶にあるあの少女とはまったく違っていた。
水城圭介は、自分が恋に落ちた柳小路がただの幻想だったのかどうか、もう分からなくなっていた。
それを聞いて、相沢紫苑と森川茉莉は大体の事情を察し、二人ともため息まじりに残念そうな表情を浮かべた。
相沢紫苑が言った。「水城圭介、実はあなたのせいじゃないの。私、前に高橋グループで柳小路と一緒に働いてたことがあるから、彼女のことはよく知ってるの。あなたが言ってた優しくて気配りのできる女性なんて、絶対に彼女じゃない。柳小路は自分の目的のためなら何だってやる人よ!」
水城圭介は困惑した表情で相沢紫苑を見つめた。
この間ずっと、自分を責めたり、柳小路に正体を明かしたことを後悔したり、逆に柳小路があまりにも冷酷だと責めたり、いろんな感情をぶつけてきたが、結局何も変わらなかった。
まさか今になって、自分のせいじゃないと言ってくれる人が現れるとは思ってもみなかった。
水城圭介は、これまで溜め込んできた苦しみや鬱憤がようやく解き放たれたような気がした。
気持ちがずいぶん楽になった。「俺のこと、内緒にしておいてくれる?」
今、高橋美咲はまだ九条蓮が九条社長だと知らないかもしれないし、自分から言いふらすわけにもいかなかった。
そこで森川茉莉が何かを思い出したように尋ねた。「じゃあ、あなたが九条社長じゃないなら、彼は誰なの?」
翌日、高橋美咲は腰をさすりながら起き上がった。やっぱり男の人をからかうのはほどほどにしないと、こうやって損することになるんだなと実感した。
ああもう、腰がめちゃくちゃ痛い。
身支度を整えてリビングに出ると、九条蓮はすでに起きていて、気を利かせて朝食を用意してくれていた。パリッとしたスーツ姿で、朝の光を浴びて一段と凛々しく見える。
九条蓮は高橋美咲が出てきたのを見ると、「朝ごはん、テーブルにあるよ。一人で食べて。俺はこれから出張だ」と声をかけた。
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