Chapter 590
高橋美咲と寝てみたい?
岩瀬一真は柳小路をじろじろ見ながら、上の空で尋ねた。「どうやって火に油を注ぐんだ?」
今の岩瀬一真は、むしろ自分の体が火照って仕方なく、その火を柳小路に消してほしい気分だった。
だが柳小路が自分のホテルの部屋まで来ているのだから、焦る必要はない。じっくりと口説けばいい。
岩瀬一真は手を出したい気持ちでいっぱいだったが、柳小路はまったく動じていなかった。
彼女が一人で岩瀬一真の部屋に来たのは、金城茉莉奈の連絡先を握っているからだ。
岩瀬一真は女好きだが、完全な恐妻家だ。今の地位もすべて妻の実家に頼っており、金城家を極端に恐れている。
柳小路は岩瀬一真のいやらしい視線に心底うんざりしていたが、高橋美咲を潰すためなら我慢するしかなかった。
柳小路は口元を歪めて嘲笑した。「高橋美咲と本当に寝てみたいんでしょ?その願い、私が叶えてあげる。」
その言葉を聞いた岩瀬一真の目が輝いた。
高橋グループにいた頃、彼と高橋美咲の件は大騒動になった。結局、何もできずに家のデブ女房に殺されかけ、長い間屈辱を味わってやっと立ち直ったのだ。
柳小路が「高橋美咲と寝てみたいか」と聞いてきた。
もちろん寝てみたいに決まっている!
あんな美人でスタイルも完璧な高橋美咲、想像するだけでたまらない。男なら誰だって一度は抱きたいはずだ。
岩瀬一真は食い気味に「もちろんだ。どんな手があるんだ?」と詰め寄った。
岩瀬一真の興味を引きつけたのを見て、柳小路は意味深な笑みを浮かべた。「その方法は心配しなくていい。私が必ず実現させる。ただ、その前にあなたにも協力してほしいことがあるの。明後日、高橋美咲のメゾン・ヴェルヌの新作発表会がある。その時、あなたは現れて発表会をめちゃくちゃにしてくれればいい。その後で、私があなたの願いを叶えてあげる。」
実際はまったく自信などなかったが、まずは口にしておく分には損はない。何よりも高橋美咲の発表会をぶち壊すことが最優先だ。
高橋美咲にはデザイナーがいないはずだったが、相沢紫苑を引き入れて新作を用意してきた。
柳小路としては、高橋美咲に新作を順調に発表させるわけにはいかない。
岩瀬一真は目を細めて、ためらいがちに言った。「それは……あまり良くないんじゃないか?」
彼はもともと金城茉莉奈に隠れて東京に来ていた。裏で高橋美咲を陥れるくらいならともかく、発表会で大騒ぎすればすぐに噂が広まるだろう。もし大阪に伝わったら、自分は終わりだ。
柳小路の目が一瞬光り、微笑みながら言った。「大丈夫。東京で私たちがしっかり手を回せば、絶対に外には漏れない。金城家のことは心配しなくていいわ。」
岩瀬一真はまだ迷っていた。家の鬼嫁が本当に怖いのだ。
だが、彼女を満足させるために、もうずっと我慢している……
柳小路は岩瀬一真がためらっているのを見ると、薄く微笑んで「怖いならやめておけば?」と言った。
そう言い終えると、柳小路は立ち上がり、その場を去ろうとした。すると岩瀬一真がすぐに「待って!」と声を上げた。
柳小路は岩瀬一真が心を動かされたことを見抜き、足を止めて「どうしたの?気が変わったの?」と尋ねた。
「どれくらい自信があるんだ?」
柳小路はにっこりと笑い「もちろん絶対の自信があるわ」と答えた。
どうせ今すぐ実行するわけじゃないし、先に承諾しておいても問題ない。とりあえず岩瀬一真をうまく乗せて、メゾン・ヴェルヌの新作発表会を台無しにさせておけばいい。後で適当に理由をつけてごまかせば済む話だ。
それを聞いた岩瀬一真は、あれこれと妄想を膨らませ始めた。
彼の脳裏には高橋美咲の息を呑むような美貌と優雅なスタイルが浮かぶ。欲望に背中を押され、彼は歯を食いしばって「わかった、やるよ」と答えた。
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