Chapter 587
自分の女に手を出すなんて
高橋美咲は心から謝罪した。さっき自分が言ったことは本当に少し配慮に欠けていたと感じていた。
九条蓮の表情は和らぎ、手を伸ばして高橋美咲を腕の中に引き寄せ、優しく「そんなに悪いことじゃないよ。心配しなくていい。必ず解決するから」と囁いた。
高橋美咲は九条蓮の胸に身を預け、その力強く安定した鼓動に耳を澄ませた。
自分の不用意な言葉で九条蓮を傷つけてしまったことが、ますます悔やまれた。
九条蓮は彼女と岩瀬一真の間に何もないと信じてくれているだけでなく、今は逆に彼女を慰めてくれている。なのに自分は、ただ彼から離れようとばかり考えていた。
自分も気持ちを切り替えて、この問題に向き合うべきだと思った。
高橋美咲は感情を込めて「本当に、あなたは私に優しすぎる。さっきあんなこと言って、本当にごめんなさい」と言った。
九条蓮の目が一瞬きらりと光り、彼女の腰をそっと抱き寄せて、意味ありげに「じゃあ、どうやって償ってくれるの?」と尋ねた。
「償うって?」と高橋美咲は驚いて聞き返した。
何を償うのか、よく分からなかった。
しかし高橋美咲が考えを巡らせる間もなく、すでに彼女は九条蓮に肩に担がれて寝室へと運ばれていた。
…
その夜、書斎にて。
九条蓮はバスローブ姿で、まだ少し濡れた髪のままソファに座り、冷たい表情で電話をかけていた。
高橋美咲は、彼が書斎に出てくる前にすでに疲れ果てて眠りについていた。
真壁直人は、調査で分かったことを一つ一つ九条蓮に報告した。
「九条社長、岩瀬一真についてはほぼ調べがつきました。彼の妻、金城茉莉奈は大阪の金城家の娘です。金城茉莉奈という名前は響きがいいですが…」
真壁直人は軽く咳払いをしてから、落ち着いた口調で続けた。「ですが、彼女は体重が約90キロもある女性です。岩瀬一真は金城茉莉奈と結婚して、彼女に寄生しているようなものです。そんな女性がそばにいれば、他の女性に目が行くのも無理はありません…」
九条蓮の眉がわずかにひそめられ、鋭い殺気が漂った。自分の女に手を出そうとするとは。
低い声で「続けて」と促した。
真壁直人は慌てて続けた。「金城家は成金ですが、大阪ではそれなりに資産があります。高橋グループの株主として出資し、岩瀬一真を高橋グループに送り込みました。金城家の後ろ盾で、岩瀬一真は高橋グループに入り、役員になったのです。」
九条蓮は黙って聞き、目は氷のように冷たかった。
「高橋さんの身元が公になっていなかった頃、彼女が高橋グループに入社した際、岩瀬一真は彼女が高橋家の娘だと知らず、自分の立場を利用して高橋さんを愛人にしようとしました。」
この時点で、電話越しにも九条蓮の冷たい気配が真壁直人に伝わってきた。
深刻な事態を避けるため、真壁直人は急いで続けた。「結局、高橋さんはもちろん断りました。その後、岩瀬一真は高橋美咲がこのことを金城家に言いふらすのを恐れて、逆に高橋さんが自分を誘惑したと噂を流したのです。」
「九条社長、状況は大体この通りです。今ならまだ解決策はあります。岩瀬一真を見つけて、本人に説明させればいいだけです。」
九条蓮の立場なら、岩瀬一真も逆らえない。
彼が出てきて説明すれば、すべてが明らかになり、影響も残らないだろう。
だが、九条蓮はそれを聞いても低い声で「必要ない。段取りをつけてくれ。明日、金城家に行く」と言った。
岩瀬一真が高橋美咲を挑発した以上、九条蓮は彼を許すつもりはなかった。
岩瀬一真に説明させれば、結局彼は何の罰も受けない。しかし九条蓮が自ら金城家に出向けば、結果はまったく違うものになる。
「かしこまりました。すぐに手配します。」
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