Chapter 580
もしかして、相手にはまだ次の一手が
「これだけじゃ足りないわ。もっと準備してからじゃないと高橋美咲を完全に潰せない。」佐伯葉月は計算高い笑みを浮かべ、「たった一晩あれば高橋美咲の評判なんて一気に地に落ちる。彼女のスキャンダルがあなたのものを上回れば、もう誰もあなたと九条さんのことなんて気にしなくなるでしょ?」と囁いた。
柳小路は考え込み、確かにその通りだと納得した。さっきは本当に焦りすぎていた。
すぐに「わかったわ、葉月。全部あなたに任せる」と力強く答えた。
二人がラウンジで交わした会話は誰にも知られていなかった。
会食も終盤に差し掛かっていたが、結局「九条さん」は一度も姿を見せず、皆は佐伯葉月にしきりに九条蓮のことを尋ねていた。
佐伯葉月は「九条さんは急な会議が入った」と言い訳してごまかすしかなかった。
だが、その言い訳を本気で信じる者は少なく、柳小路と九条蓮の関係に疑いの目を向ける者も現れ始めていた。
食事が終わると、皆はそれぞれクラブを後にした。九条蓮は森川茉莉と相沢紫苑を送り届けた後、高橋美咲を連れて自宅マンションへ戻った。
帰り道、高橋美咲のスマホに一枚の写真が届いた。
その写真を見た瞬間、彼女の瞳孔が一気に収縮した。写っているのは自分、だが自分ではない。
顔は確かに自分だが、体がしている奔放な行為は一度もしたことがないものだった。
送り主は見知らぬ番号だった。
メッセージには「高橋美咲、過去をバラされたくなければ、今すぐこの場所に来い」と書かれていた。
記載されていた住所は東京のホテルだった。
この時間にホテルに行くなんて、どう考えても怪しすぎる。
高橋美咲の目に嘲りの色が浮かんだ。
岩瀬一真は本気で自分を脅せると思っているのだろうか。まるで自分が簡単に操られる馬鹿だとでも?
彼が突然現れたのは偶然じゃない。そもそも岩瀬一真が今夜の部署の会食に現れたこと自体、不自然だった。裏で誰かが糸を引いていなければあり得ない。相手にはまだ次の一手があるのかもしれない。
結局、高橋美咲は岩瀬一真を無視し、スマホの画面をロックした。
もともと高橋美咲は岩瀬一真を相手にするつもりもなかったし、全く気にも留めていなかった。だが、まさか翌日出社した途端、事態がここまで深刻になるとは思いもしなかった!
会社に着いた瞬間、皆が妙な目で自分を見ているのに気づいた。だが目が合うと、すぐに視線を逸らされた。
何か聞くわけにもいかず、困惑したままエレベーターでメゾン・ヴェルヌのフロアへ上がると、森川茉莉と相沢紫苑が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「高橋マネージャー、やっと来てくれました!」
「どうしたの?」
森川茉莉は深刻な顔でスマホを取り出し、「今朝、会社のメイングループで大変なことが起きたんです。高橋マネージャーはグループに入ってないから知らないですよね。ずっと待ってたんです。とにかく、これ見てください」と言った。
そう言って、森川茉莉はスマホを高橋美咲に手渡した。
高橋美咲は訝しげに受け取り、真剣な表情で画面をスクロールした。
事件は会社のメイングループで起きていた。高橋美咲は履歴を遡っていった。
要点は、柳小路が突然実名で現れ、高橋美咲の過去を暴露し始めたということだった。
高橋グループ時代の古い原稿流出事件だけでなく、大小さまざまな噂話が次々と書き込まれ、どれも彼女にとって不利なものばかり。その中でも最も深刻なのは岩瀬一真との件だった。
岩瀬一真は既婚者だ。もし事実なら、彼女の評判は完全に地に落ちる。
さらに、昨夜のクラブでの監視カメラ映像まで投稿されていた。岩瀬一真が彼女に話しかけている場面だ。
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