Chapter 575
まさかの新展開
水城圭介がそんな宝物を分けるはずもなく、ふっと鼻で笑い、背を向けて一人で食べ始めた。
あっという間に週末がやってきた。
その日仕事が終わっても、高橋美咲もメゾン・ヴェルヌの社員たちも誰一人帰ろうとしなかった。今夜は、みんながずっと楽しみにしていた懇親会の日だったからだ。
九条蓮が高橋美咲を車で送り、森川茉莉と相沢紫苑も便乗して一緒に向かった。
二人は高級車の後部座席に座り、感嘆と驚きでいっぱいだった。こんな車に乗るのは初めてで、顔には驚きが隠せない。本当に高橋美咲のおかげだ。
これが前に柳小路を見事に打ちのめしたあの車なのか?興奮が抑えきれず、高橋美咲の背後でこそこそと囁き合った。
「すごい、めっちゃ豪華……!」
「座ってるだけで体が固まっちゃいそう!」
そう言いながら、運転席の九条蓮に目を向けた。
その時の九条蓮は白いシャツに黒のスラックス姿で、知的で上品な雰囲気を漂わせていた。運転に集中している後ろ姿だけでも際立つほどのイケメン。落ち着いた所作には言葉にできない魅力があった。
森川茉莉はしみじみとため息をついた。「なんでだろう、うちの高橋マネージャーの旦那さんって、九条社長に雰囲気が似てる気がするんだよね。」
初めて九条蓮に会った時から、森川茉莉はずっとそう感じていたが、最近はその思いがますます強くなっていた。
相沢紫苑は思わず笑い出した。「やめてよ。九条社長が自分で運転してくれるなんて、どれだけ徳を積んだらそんな奇跡が起きるのよ。」
……
東京の有名なエンターテインメントクラブ。
Niaの懇親会はこの会員制クラブで開催されていた。食事だけでなく、カラオケなどのアフターも楽しめる複合施設で、こうしたイベントにはぴったりの場所だ。
多くの人が集まっておしゃべりをしていた。
柳小路は中央に座り、周囲には彼女に取り入ろうとする人たちが集まっていた。
「柳小路さん、九条社長はいつ来るの?みんな待ちきれなくて。」
「そうそう、私も九条社長を一度も見たことないから、今回は絶対しっかり見ておきたい!」
ほとんどの人が九条蓮を見たことがなく、興味津々になっていた。
メゾン・ヴェルヌから移ってきた人たちが見たことあると聞き、思わず尋ねた。「九条社長、見たことあるんですよね?どんな人なんですか?」
その数人は九条蓮の姿を思い出しながら、口々に「もちろんイケメンでかっこいいよ!」と答えた。
正直、九条社長はちょっと普通っぽいし、高橋美咲の彼氏ほどのルックスじゃないと思っていても、やはり九条社長は九条社長なので——
佐伯葉月もその輪の中にいた。彼女は柳小路をちらりと見て、眉をひそめた。
ここ数日、柳小路はまるで何事もなかったかのように振る舞い、自信満々で全く動揺していない様子だった。
もしあの電話を偶然聞いていなければ、佐伯葉月も柳小路に何も起きていないと思っただろう。それほどまでに彼女は落ち着いていた。何か策でもあるのか?
とはいえ、佐伯葉月はすでに別の手を打っているので、高橋美咲が目立つことを心配する必要はなかった。
そう思うと、佐伯葉月は冷たく口元を歪めた。
その時、高橋美咲たちが到着した。
周囲のNia社員たちは一瞬静まり返り、視線が高橋美咲たちに集まった。何しろ、彼女たち以外は全員Niaの人間だ。
元メゾン・ヴェルヌ出身であっても、今はメゾン・ヴェルヌと競合する立場。
柳小路は高橋美咲があの男を連れてきたのを見て、一瞬嫉妬の色を浮かべた。
だがすぐにそれを抑え、穏やかな笑みを浮かべて言った。「高橋さん、やっと来たのね。こっちに座って。」
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