Chapter 572
この件を高橋美咲に利用する
そう考えると、柳小路の顔はますます暗くなった。今さらどこから九条社長を連れてくればいいのか。
明らかに自分のせいじゃない。水城圭介が九条社長のふりをして自分を騙したのだ!
高橋美咲の男も九条社長の秘書だし、水城圭介も秘書だけど、あっちと比べたら水城圭介なんて全然話にならない!
本当に嫉妬で気が狂いそうだった。どうして高橋美咲はあんな男と出会えて、自分はこんなに運が悪いのか。
前回、水城圭介から電話がかかってきて、車に轢かれたふりまでしていた。口から出まかせばかりの男が、まだ自分を騙そうとしている。あんな身分や経歴じゃ、誰も相手にしない。
その時はトイレに隠れて電話に出ていた。通話が終わってから、隣の個室から佐伯葉月が出てくるのを見つけた。
つまり、佐伯葉月には自分の状況が全部バレてしまったのだ。
でも佐伯葉月は馬鹿にするどころか、逆に策を授けてくれた。
まずは高橋美咲がかつて高橋グループで働いていたことをみんなに知らしめるのが第一歩だと。次にどうするかは、まだ教えてもらっていない。
その時は頭が真っ白で、言われるままに佐伯葉月の言う通りにした。
今や高橋美咲の情報は広まった。次の手を佐伯葉月に聞くべきだ。
そう思い、柳小路は佐伯葉月に電話をかけた。「もしもし、葉月。例の件、次はどうするの?明日仕事終わりに教えてくれる?わかった。じゃあ明日仕事終わりに一緒にご飯行こう。」
電話を切ると、柳小路の胸の緊張がようやく和らいだ。
…
翌日、佐伯家の実家。
佐伯大輔はソファでお茶を飲みながら、出かける準備をしている佐伯葉月に目をやり、「葉月、九条インターナショナルの新ブランドの方はどうだ?早く軌道に乗せないとな。何かあれば遠慮なく言いなさい」と声をかけた。
佐伯葉月が自ら九条家の大旦那様に掛け合い、九条インターナショナルの新ブランドマネージャーとして高橋美咲と競うポジションを得たことは知っていた。
もう一週間以上経つが、進捗がどうなっているのか気になっていた。
佐伯葉月は想像以上に有能で、しっかり自分の考えを持っている。最初は葉月と九条蓮のことも少し心配していたが、今はあまり気にしなくなった。
「心配しないで、パパ。Niaはもう順調に進んでるし、最新のデザインもすでにサンプル制作に入ってる。特に問題がなければ、すぐにプロモーションと販売も始められるわ。」葉月は足を止め、自信たっぷりに微笑んだ。「高橋美咲の方は、まだデザイナーすら見つかってない。もう私たちの方が一歩リードしてる。今回は絶対に負けないわ。」
「よくやった!」佐伯大輔は満足そうに頷いた。
ふと思い出したように、再び念を押す。「でも、仕事ばかりに気を取られず、九条蓮とももっと接点を持つようにしなさい。自分の魅力を見せて、彼に違う一面を意識させるんだ。」
「わかってる。」
佐伯葉月の目が鋭く光る。あの愚かな柳小路が、みんなを食事会に招待し、しかも九条社長が来るとまで吹聴していたことを思い出した。
柳小路は無謀にも高橋美咲まで招待していた。
高橋美咲側もすでに出席を承諾しており、九条蓮を連れてくる可能性もある。本来なら柳小路の自滅で終わるはずだったが、柳小路を通じて高橋美咲について色々知ることができた。ちょうどこの件を高橋美咲にぶつけて利用できる。
そう思うと、葉月の口元に嘲笑が浮かぶ。
どんな男でも、自分の女の汚れた過去を完全に無視できるはずがない。いざとなれば、九条蓮と高橋美咲の関係はこの試練に耐えられないはず。
たとえ九条蓮が耐えたとしても、九条家の大旦那様はどうだろうか。
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