Chapter 571
高橋グループで働いていたことがあるの?
「れ、蓮……」思わず緊張してしまった。
前回は薬のせいで、九条蓮とのあの夜は怪我までしてしまった。最近はだいぶ回復したものの、心のどこかにまだ恐怖が残っていた。
だが、九条蓮の強引なリードの前に、すぐにすべてを委ねてしまい、最後の防御まで彼に奪われた。
翌朝、高橋美咲は腰をさすりながら起き上がり、心の中であの男を盛大に罵っていた。
不満を抱えていると、九条蓮がドアを開けて入ってきた。
高橋美咲は小さくため息をつき、あまり相手にしたくなかった。
九条蓮はベッドのそばに座り、優しく尋ねた。「朝ごはんできてるよ。先に食べる?それとも先にシャワー浴びる?」
自分の罪滅ぼしのために、彼が自分より早く起きて朝食を用意したのだと分かっていた高橋美咲は、最初はまだ少し不機嫌だったが、そのわだかまりもほとんど消え、すぐに機嫌も直った。
高橋美咲の動きがゆっくりなのを見て、九条蓮は「抱えていこうか?」と聞いた。
「大丈夫。」
高橋美咲は、そこまで弱っていないと思い、我慢することにした。
彼女が断ると、九条蓮は無理強いしなかった。
……
朝食を終えた二人は、そのまま出勤した。
メゾン・ヴェルヌに着くとすぐ、森川茉莉が最新情報を報告しにやってきた。「高橋部長、さっきニアの担当者に週末の食事会を承諾したと伝えてきました。」
その時になって、高橋美咲は柳小路と九条社長に関する件を思い出した。
彼女は口元をわずかに上げ、意味深な笑みを浮かべた。週末、柳小路が自滅するのを見届けるつもりだった。
週末を待たずして、高橋美咲に関する噂が九条インターナショナル社内で突然広まり始めた。
森川茉莉は興味津々に直接尋ねた。「高橋部長、高橋グループで働いてたことあるんですか?」
「どうして知ってるの?」高橋美咲は不思議そうに彼女を見た。
「社内のグループチャットで誰かが言ってたんです。」森川茉莉はため息をつき、「柳小路さんがどうして高橋部長と仲が悪いのか不思議だったんですけど、あの人も高橋グループ出身なんですね。前は同僚だったんですね!」
社内グループで自分の過去が暴露された?
高橋美咲は少し眉をひそめた。
自分は社内のメイングループには入っていなかったので、その話題は知らなかった。「スマホ貸して。見せて。」
森川茉莉はすぐにスマホを渡した。高橋美咲は履歴を確認した。知らない誰かが高橋グループ時代の役職や経歴をいくつか書き込んでいるだけで、それ以上のことはなかった。
グループ内では多くの人がその話題で盛り上がり、高橋美咲にそんな過去があったことに驚いていた。
高橋美咲はさらに眉をひそめた。
大阪時代の過去は、高橋家の娘という身分以外は特に隠していたわけでもない。いずれは知られることだった。
ただ……なぜか表情が少し曇り、目にかすかな不安がよぎった。
当時のことはほとんど片付いているはずだから、これ以上問題は起きないはず。
そう思い直し、高橋美咲は気にしないことにした。
柳小路は自宅の部屋で、苛立ちと不安を顔に浮かべて座っていた。
前回、九条インターナショナルを退社したとき、高橋美咲に正面玄関で恥をかかされた。その後、堂々と「今週末は九条社長と一緒にNiaの同僚全員を食事に招待する」と言いふらしてしまった。
まさか、自分が付き合っていると思っていた九条社長が、実は九条蓮ではなかったなんて!
しかも、また高橋美咲を押さえつけるために、彼女やメゾン・ヴェルヌの数人にも招待状を送ってしまった。今さらドタキャンすれば、みんなに嘘をついていたと疑われるのは目に見えている。
もう公言してしまった以上、みんなの前で恥をかかずに済む方法はないのか?
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