Chapter 570
どうして今まで会ったことがないの?(続き)
水城は「この病院の近くのテイクアウトは本当にひどくて……。もしよかったら、毎日少し多めに作ってもらえませんか?僕が配達員に取りに行かせます。材料費も全部お支払いしますので、お願いします!」と頼んだ。
「えっと……」
相沢紫苑はまさかこんなお願いをされるとは思っていなかったので、少し戸惑った。
水城は怪我がひどくて表情も分かりにくかったが、相沢紫苑を見る目はとても真剣で、下心や悪意など一切感じられず、自然と警戒心が和らいだ。
それに、高橋美咲の知り合いなら悪い人ではないだろうと相沢紫苑は思った。
「分かりました」と相沢紫苑は承諾した。
水城は慌ててお礼を言い、感謝の気持ちでいっぱいの表情で「じゃあ、連絡先を交換してもいいですか?」と尋ねた。
「もちろんです」
2人は連絡先を交換し、それで知り合いになったことになった。
一通り話が済むと、相沢紫苑はそれ以上長居せず、そのまま部屋を出ていった。
……
相沢紫苑は急いでアパートに戻った。
少し遅くなってしまったので、帰宅した時にはすでに食事も終わっており、みんなが彼女を待っていた。
「相沢紫苑、どうしてこんなに遅かったの?もう少し帰りが遅かったら迎えに行こうかと思ったよ」
「人が多くて、エレベーター待ちがすごく長かったの」
みんなで急いで席について食事を始めた。
簡単な食事だったが、みんなとても楽しそうに食べていた。夜遅くまで談笑が続き、高橋美咲と九条蓮がようやく帰ることになった。
帰宅後、高橋美咲は九条蓮を見上げて「先にシャワー浴びる?それとも私が先に入ろうか?」と尋ねた。
シャワー?
九条蓮の深い瞳が一瞬暗くなった。
思わず親密で熱い場面を想像してしまう。高橋美咲の存在は彼にとってあまりにも魅力的で、今の言葉もまるで誘いのように聞こえた。
「君が先にどうぞ。あとで行くよ」と九条蓮は静かに言った。
「うん、じゃあ私が先に入るね」
高橋美咲は彼の目の奥の一瞬の影に気づかず、そのまま部屋に着替えを取りに戻った。
高橋美咲の姿が見えなくなるのを見届けて、九条蓮の口元には微かな笑みが浮かんだ。
高橋美咲はバスルームに入った。
ドアを閉めて鍵をかけようとしたその時、背の高い影が強引に入ってきた。顔を上げると、九条蓮の端正な顔が目の前にあり、高橋美咲は不思議そうに「どうしたの?何か用?」と尋ねた。
この時点でも高橋美咲はまだ危険に気づかず、九条蓮が何か話があるのだと思っていた。
彼は後ろ手でドアを閉めた。
バスルームのドアがロックされる音を聞いて、高橋美咲はようやく状況を察した。
「ちょっと、何するの?さっき私が先にシャワーって言ったでしょ?なんで鍵までかけるの?」と不安げに尋ねた。
九条蓮は高橋美咲の方へ歩み寄り、シンクと自分の胸の間に彼女を閉じ込めた。彼は低く笑い、意味ありげに言った。「さっき言ったのは、君が先に行っていいってことだよ。俺もすぐ行くから。」
「……」高橋美咲は、自分がまだまだ純粋すぎることを痛感した。そんな意味だとは全く思っていなかった。
まさか九条蓮の言葉がそういう意味だったなんて、全然予想していなかった。
でも、気づいた時にはもう遅かった。まるで罠に落ちた子羊のようだった。
これって、一緒にお風呂に入るってこと?
そう思った瞬間、顔がみるみる赤くなった。もっと親密なことはすでに経験しているのに、今はどうしても彼を平然と見られなかった。
残念ながら、今は九条蓮の胸にしっかりと閉じ込められ、彼の涼やかで清潔な香りに包まれて、逃げ場はどこにもなかった。その香りを吸い込むたびに、酔いそうな気分になった。
高橋美咲は顔を上げて九条蓮の目を見つめた。そこには燃え上がるような炎がはっきりと宿っていて、今にも自分を焼き尽くしそうだった。
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