Chapter 567
もし違うことが起きたら
「柳小路も本当に図々しいよね。よりによって九条社長の彼女だなんて嘘までついて。九条社長があんな女に惚れるわけないって、最初から思ってた。」
美咲はずっと愚痴りたかったが、他人の人生に口を挟む立場でもないので、今まで黙っていた。
でも今、すべてが明るみに出て、真実がはっきりした!
美咲の言葉を聞いて、九条蓮は少し興味を持った。
「九条社長があんな女に惚れるわけないって?じゃあ、どんな女性なら惚れると思う?」
高橋美咲は少し考え、水城圭介の顔を思い浮かべた。しばらく考えてみても、彼にふさわしい女性は思い浮かばなかった。
佐伯葉月というお嬢様もいたが、彼女もピンとこない。しかも佐伯葉月は九条蓮に気があるようだし、彼女も九条社長には釣り合わない気がした。
この時点で、高橋美咲はまだ、あの有名な九条インターナショナルの九条社長が自分の夫だとは夢にも思っていなかった。すぐ隣に本人がいるのに、必死で彼にふさわしい相手を探そうとしていた。
結局、美咲は「私にも分からない。ただ、柳小路じゃなければそれでいい。」と答えた。
柳小路には全くいい印象がない。ただ、あの得意げな顔を見るのが我慢ならなかっただけだ。
九条蓮は口元に微笑みを浮かべた。九条社長はすでに自分に一番ふさわしい女性を見つけている。その女性は、今まさに目の前にいる。
「あっ!森川さん、なんで魚なんて買ってきたの?」
相沢紫苑は何品か料理を作り終えたところで、魚を見て初めて驚いたように声を上げた。
実は紫苑は魚料理が苦手で、美味しく作る自信がなかった。下処理された魚を前に、眉をひそめて困ってしまった。
高橋美咲が前に出て、紫苑の手からフライ返しを受け取った。「大丈夫、私がやるよ。」
美咲はすぐに料理を始めた。
その時、ふと水城圭介がまだ病院で食事を待っていることを思い出した。すでに出来上がった料理を見て、急いで「先に少し取り分けておいて。あとで水城さんに届けに行くから」と言った。
相沢紫苑と森川茉莉はすぐにテイクアウト用の容器を用意し、料理を分けていった。
詰め終わると、紫苑はキッチンで忙しくしている美咲を見て、少し申し訳なさそうな顔をした。
本来は紫苑が美咲たちを招いて食事を振る舞うつもりだったのに、苦手な料理があって美咲に手伝わせてしまったことが心苦しかった。だから、何か手伝いたいと思った。
相沢紫苑は「病院の友達って、どの部屋?私が届けてこようか?」と声をかけた。
美咲は魚料理で手が離せず、紫苑の申し出にすぐ同意して水城圭介の病室を伝えた。
森川茉莉は紫苑が料理を運ぶのを見て、一緒に行こうとした。
紫苑はすぐに「大丈夫だって、ただの食事の配達だよ。私を子ども扱いしないで。ここで高橋部長の手伝いしてあげて。もし一人じゃ大変だったらどうするの?」と笑った。
その言葉を聞いて、森川茉莉もようやく同行を諦めた。
こうして相沢紫苑は一人で料理の入った容器を持ち、病院へ向かった。
病院。
食事の時間になり、隣のベッドの患者はすでに食べ始めているようだった。食欲をそそる香りが漂ってくる。水城圭介はベッドでじっと横になったまま、空腹でお腹が鳴りっぱなしだったが、大家さんが食事を持ってきてくれると言っていたので、じっと我慢して待つしかなかった。
お腹すいた……。
圭介は本当に自分が不憫でたまらなかった。身元がバレて振られただけでなく、交通事故にまで遭い、今は空腹にまで耐えなければならない。
この2日間は手術が必要で、スマホを見ることもできなかった。ようやく今、手に取ることができた。
圭介はベッドサイドのテーブルからスマホを手に取った。
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