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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 56 - 高橋美咲、結婚する

Chapter 56

高橋美咲、結婚する

九条沙耶香も納得した様子だった。

高橋家は普通の家じゃない。大阪でも特別な地位を持っている。桜井奈緒がどんなに度胸があっても、財閥令嬢のふりをして九条家を騙すなんて、絶対にできるはずがない。

東京郊外の一軒家で、柏木健人は監禁されていた。

自由を奪われているだけでなく、携帯電話まで監視されている。

九条蓮が九条社長だと知った時点で、柏木健人はすっかり意気消沈していた。逆らうなんて、とてもできない。今や、桜井奈緒――自分を破滅させた女を殺してやりたいほど憎んでいる。

今は従うしか生きる道がない。

ただ、九条蓮が自分に何をさせたいのかは分からなかった。

柏木健人は隣にいる真壁直人を見て、哀れっぽく言った。「真壁さん、言われた通りにやりました。九条社長に、俺のこと少しは取りなしてもらえませんか。あの女に誘惑されて、つい魔が差しただけなんです。」

真壁直人は冷たい視線を向け、鼻で笑った。「お前は絶対に手を出しちゃいけない相手に触れたんだ。九条社長はまだ怒りが収まっていない。これからは、お前の働き次第だ。」

……

九条インターナショナルのオフィス内。

桜井奈緒は落ち着かず、そわそわと不安げだった。

そっとお腹に手を当てる。

婚約の日が近づいているのに、体は思うようにならず、まだ妊娠できていない。このままでは、いつか真実がバレるのではと本当に怖かった。

それに、柏木健人の件も……

高橋美咲のことを片付けるよう、すでに柏木健人に指示したのに、何の連絡もなく、状況が全く分からない。

その時、九条沙耶香と別れた九条悠真が、すぐに桜井奈緒のオフィスにやってきた。

九条悠真が険しい顔で入ってくるのを見て、桜井奈緒は慌てて思考を抑え、我に返った。立ち上がって近づき、優しく気遣うように尋ねた。「悠真、どうしたの?そんなに浮かない顔して、何かあった?」

「奈緒、母さんが早く義父さんに会いたいって言ってる。いつ連れて行ってくれる?もし都合が悪いなら、こっちから大阪に行ってもいい。」

その言葉を聞いた桜井奈緒は、体がこわばり、一瞬目に動揺が走った。

すぐに感情を抑え込む。

「悠真、前にも言ったでしょ?父と喧嘩してて、今はあまり関係が良くないの。婚約の時に招待状を送るから、その時に和解する口実にするつもり。」

もう何度もはぐらかしてきた。今回はあまりにも適当な言い訳だと、九条悠真の不信感を招きかねない。下手な言い方をすれば、疑われてしまう。

だから、もう断るのはやめて、婚約パーティーに高橋正人を招待すると直接言うことにした。その時に何とかごまかすつもりだ。

桜井奈緒の言葉を聞いて、九条悠真の険しい表情はかなり和らいだ。

九条家の一員とはいえ、家の中での立場は決して高くない。だからこそ、九条蓮にすがるしかなかった。

だが、高橋正人が義父になれば、一気に出世できるかもしれない。もしかしたら九条会長の目に留まり、九条蓮を出し抜いて、九条家の後継者になれるかもしれない。

九条悠真は、明るい未来を思い描いていた。

口調も柔らかくなり、小声で「なるほどな。じゃあ早く招待状を送ってくれよ」と言った。

「うん。私もお父さんと仲直りしたいから、心配しないで。」桜井奈緒は九条悠真の腕にしがみつき、甘えるように言った。

ふいに九条悠真が尋ねた。「最近、高橋美咲のことで何か知ってる?」

「どうして?何かあったの?」桜井奈緒は驚いたように聞き返した。

九条悠真が自分から高橋美咲のことを聞いてきたことで、桜井奈緒の胸に嫌な予感がよぎり、すぐに警戒心を強めた。

「さっき高橋美咲が来て、もう結婚したって言ってたんだ。」

高橋美咲が自分よりもいい男と結婚したと言ったことを思い出し、九条悠真は信じていないものの、男としてのプライドが傷つき、どうしても納得できない気持ちが残っていた。