Chapter 555
彼は高橋美咲を迎えに来た(続き2)
以前、九条蓮が高級車を2日ほど貸してくれたのは事実で、水城圭介はその車で柳小路を迎えに行ったこともあった。
ところが奇妙な偶然が重なり、柳小路はその車を水城圭介のものだと勘違いした。しかも九条蓮になりすましていた件があったため、水城圭介は事情を説明できなかった。
今日になって、九条蓮は突然、これからはもう自分のふりをしなくていいと水城圭介に告げた。
水城圭介は、九条蓮がついに自分の正体を隠すのをやめるとは思ってもみなかった。これからは、もうこんなに苦労しなくてもよくなるのだ。
その後、水城は高級車を返却した。当面は真壁直人の車を使うしかなく、真壁が戻ってきたら車を返すつもりだった。
さっきは、運悪く九条蓮に出くわしたくなかっただけだ。
自分のような普通の人間が、容姿もその他の条件も、堂々たる社長である九条蓮と比べられたら、その差はあまりにも残酷だった。
もちろん、わざわざ自分から出しゃばって九条蓮の存在感を奪うつもりもなかった。
本当は、九条蓮が去るのを待ってから車を降りて柳小路を迎えに行くつもりだった。まさか柳小路が怒って先に帰ってしまうとは思わなかった。車を降りて追いかけることもできず、仕方なく車を駐車場に停めてから柳小路を探しに行くことにした。
水城は携帯を取り出し、柳小路の番号を押した。
コールが2回鳴ったところで電話がつながり、柳小路のあまり機嫌の良くなさそうな声が聞こえてきた。「今どこにいるの?」
「柳さん、さっきどこに行ったの?今地下駐車場にいるよ。」
「えっ!さっき私のこと見てたの?じゃあなんで迎えに来てくれなかったの?」
柳小路は完全に怒り心頭だった。
もしさっき九条蓮がそこにいてくれたら、高橋美咲なんてとっくに叩きのめしていたはずだ。どうして逆に高橋美咲に平手打ちされて、みんなに笑われる羽目になったのか。
九条蓮はさっきずっと自分のことを見ていたのに、姿を現さなかった。どんなに九条蓮に媚びを売りたくても、柳小路はどうしても怒りを抑えきれなかった。
顔には怒りが満ち、今にも爆発しそうな勢いだった。
これまでずっと、柳小路は水城に媚びてきたが、こんな口調で話したことは一度もなかった。
水城に対して怒りをぶつけたのは、これが最初で最後だった。
しかもこれは、水城が九条蓮だと思っているからこそ、柳小路なりにかなり我慢してのことだった。もしそうでなければ、水城は今ごろ大変な目に遭っていただろう。
柳小路の怒りのこもった声を聞いて、水城は内心少し罪悪感を覚えた。
すぐに彼女をなだめるように言った。「柳さん、そんなに怒らないで。さっき君が出ていくのを見て、追いつけなかったんだ。今どこにいる?迎えに行くから。」
九条蓮がこんなに下手に出て自分をなだめてくれるのを聞いて、柳小路の心の中の怒りもようやく少し収まった。
「いいわ。私がそっちに行く。」
通話を切った後、水城は大きくため息をついた。
今日九条蓮に言われたことを思い出す。「もう九条蓮のふりをしなくていい」と。ということは、柳小路にも本当のことを話していいのだろうか。
このまま誤解されたままでは、やはりよくない。
しばらく葛藤した末、水城は決心した。
柳小路に、自分は九条蓮ではないと伝えよう。
ほどなくして、柳小路がハイヒールの音を響かせて現れた。
彼女は駐車場をしばらく探し回ったが、前回自分を迎えに来た高級車は見つからなかった。さっきになってようやく気づいたのだ。高橋美咲の男が九条蓮と同じ車に乗っていたから、みんなが勘違いしたのだと。
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