Chapter 551
九条徹を狙うつもり?
その言葉を聞いた柳小路は、途端に美咲を見る目が警戒心に満ちたものに変わった。
もともと美咲には警戒していたし、九条徹を奪われるのではと心配していた。今の発言でその思いがさらに強まっただけだった。
柳小路は冷たく鋭い視線で美咲を睨みつけた。「高橋美咲、今すぐここから出て行きなさい。」
佐伯葉月は柳小路と美咲が対峙するのを見て、口元にかすかな笑みを浮かべた。柳小路に味方する決断は正しかったようだ。自分は山の向こうから虎の戦いを眺めるだけでいい。
そう思いながら、そっと脇に移動し、何も言わなかった。
美咲の目が暗くなる。こいつらの頭はどうなってるんだ?
今は雨が降ってるのが見えないのか?突然の雨でしかも帰宅ラッシュ、誰も傘なんて持っていない。ここで待たなければ、外でびしょ濡れになるだけだろう。
みんなここで待っているのに、なぜ自分だけが九条徹を狙っていることになるんだ?
柳小路のためだけに、まるで狂犬のように自分に噛みついてくる。
美咲は人に踏みつけられるような柔な女じゃない。柳小路の隣にいる女性たちを見て言った。「ここに立ってるだけで九条徹を誘惑してることになるなら、あなたたち全員も九条徹を誘惑してるってことになるよね?」
そう言ってから、隅に立っている男性社員2人の方を見て続けた。「じゃあ、雨宿りしてるこの男性2人も九条徹を誘惑してるってこと?」
「……」
さっきまで美咲を見下していた女性は、何も言い返せなかった。結局、柳小路に媚びるために難癖をつけていただけで、言っていることに全く筋が通っていなかったのだ。
美咲は半ば笑みを浮かべてその女性を見た。
女性は弱々しく「私たちはあなたみたいに恥知らずじゃないから!」とだけ反論した。
「九条徹を誘惑してないなら、外に立てば?ここにいるってことは、あなたたちも九条徹を誘惑してるってことになるよ。」
「あんた……」
女性はすでに怒りで言葉も出ないが、美咲は容赦しなかった。
美咲は続けた。「はいはい、分かったよ。柳小路の靴でも舐めたいんでしょ。海よりもお世辞が深いんだから、もうみっともない真似はやめなよ。」
その瞬間、群衆の中から誰かが吹き出して笑い、女性はさらに恥をかいた。
女性は美咲の鋭い言葉に完全に黙り込み、結局一人で怒りに震えるしかなかった。
柳小路は隣で顔色を曇らせ、傲慢に言い放った。「高橋美咲、なんで他の人まで巻き込むの?出て行けって言ったでしょ、聞こえなかったの?」
美咲は落ち着いた表情で柳小路を見た。
「ここも共用スペースよ。私は好きなところに立つわ。九条インターナショナルの奥様になってからそういう口をききなさい。今のあなたには九条インターナショナルは関係ないでしょ。」と鼻で笑った。
柳小路は怒りで今にも倒れそうだった。美咲は本当に図々しくて、出て行こうとしない!
その時、誰かが柳小路をすぐに慰めた。「柳小路さん、こんな人にレベルを合わせることないですよ。」
みんなに宥められて、柳小路はふんと鼻を鳴らし、ようやく少し気が晴れた。
その時、世界に一台しかない十五億円相当の特注高級セダンが、みんなの視界に現れた。流れるようなフォルムと控えめながらも圧倒的な存在感を放つビジネスカーは、誰の目にも明らかだった。
あと一つ信号を越えれば、すぐにここに到着する。
柳小路はその車を見て、口元にうっすらと笑みを浮かべた。
さっきまで美咲に台無しにされた気分が、一気に晴れやかになる。顎を上げ、得意げな表情を見せた。
柳小路のそんな様子を見て、周囲の人たちはすぐにこれが九条徹の車だと気づいた。
九条徹が来た!
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