Chapter 545
忘れられないあの味
九条家の大奥様に褒められて、高橋美咲は少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「うん、全部私が作りました。お祖父様、お祖母様、早く召し上がってみてください。お口に合うかどうか……」
九条家の大奥様は角煮を一切れ箸で取り、口に運んだ。
飲み込んだ瞬間、目を輝かせて何度も褒めた。「まあ!この角煮、本当に美味しいわ。脂っこくなくてコクがあって、お肉も柔らかいのにしっかりしてる。」
九条家の大旦那様もその言葉を聞き、目の前の角煮を見て思わずごくりと喉を鳴らした。
彼が一番好きなのは角煮だったが、最近九条家の料理人が変わってからというもの、角煮はひどい味になってしまった。前回は食べて吐いてしまったほどで、それ以来料理人に角煮を作るのを禁じ、ずっと食べていなかった。
今、目の前には色も香りも味も完璧な角煮が並び、胃の奥から食欲が湧き上がってくる。
九条家の大奥様は、九条家の大旦那様が意地を張っているのを分かっていたので、わざわざ言い争うこともせず、角煮を一切れ取って彼の茶碗に入れた。「さあ、何はともあれご飯の後にしましょう。早く食べてみて。この角煮、本当に美味しいのよ。」
九条家の大旦那様もついに我慢できず、角煮を口に運んだ。
角煮が口の中でとろけた瞬間、九条家の大旦那様の険しかった眉がふっと緩み、心底驚いた。
これこそ、ずっと探し求めていた、忘れられなかったあの味だ!
九条蓮がご飯をよそって戻ってきた。茶碗を九条家の大旦那様と大奥様の前に置き、「お祖父様、お祖母様、ご飯ですよ」と声をかけた。
もう九条家の大旦那様は何も文句を言わず、黙々と箸を進め、食欲も旺盛で、ご飯を二杯も平らげた。
最後はお腹がいっぱいになりすぎて立ち上がれず、庭を散歩しに出ていった。
食後、安さんが自ら皿洗いを申し出た。主人に食卓に座って一緒に食事をするよう言われたばかりなので、しっかり働かなくてはと思ったのだ。
高橋美咲と九条家の大奥様、九条蓮も、九条家の大旦那様に誘われて一緒に散歩に出た。
九条家の大奥様は高橋美咲の手を取り、優しい笑顔を浮かべてそっと言った。「美咲さん、あの人は思ったことをすぐ口に出すだけなの。気にしないでね。」
「いえ、大丈夫です。お祖父様、面白い方だと思います。」
以前は高橋美咲も九条のお祖父様が少し怖かったが、今日の様子を見ているうちに、なんだか可愛らしく思えてきた。本当にただの頑固なおじいさんだと気づいたら、もう怖くなくなった。
きっと九条のお祖父様も自分のことを見直してくれるはず。
自分も努力して、佐伯葉月さんに負けないことを証明したい——そう思った。
庭では、九条家の大旦那様が厳しい表情でゆっくり歩き、九条蓮が隣で支えながら静かに付き添っていた。
しばらく沈黙が続いた後、九条家の大旦那様がふいに口を開いた。「さっき言ったこと、覚えているか?」
「覚えています。」
九条蓮は一瞬だけ目を伏せ、落ち着いた口調で答えた。「高橋美咲が佐伯葉月さんに勝ったら、認めてくださると。」
「……」その言葉を聞いて、九条家の大旦那様は思わず怒りで倒れそうになった。
九条蓮を睨みつける。「このバカ息子は肝心なところだけ覚えてやがる!本当は佐伯葉月が勝ったら、お前は素直にお見合いするって言っただろうが!」
「お前は本当に頑固だな。あの女が負けたら、九条家はちゃんと面倒を見る。家が欲しいとか何でも言えばいい。もう俺に口答えするな。九条家の決断はすべて正しい。だからこそ、家が代々繁栄するんだ!」
You might also like




