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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 542 - 女主人の器(続き)

Chapter 542

女主人の器(続き)

子どもが多いと、こういう悩みがつきものだ。みんな誰かが親の面倒を見るだろうと思い込んで、結局は誰も積極的に動かなくなってしまう。

「三番目は蓮くんの叔母さんで…」

九条家の大奥様が九条千紗の話になると、顔に困惑と苛立ちが浮かんだ。

娘は本来一番親思いなはずなのに、九条千紗はなぜか兄たちと張り合うことに執着してしまった。

九条家が男子優先というわけではないが、九条千紗もその息子も能力が平凡で、もし将来九条家を任せたら五年ももたずに潰れてしまうだろうし、そうなれば先祖に顔向けできない。

九条家の大奥様は九条千紗のゴタゴタについては、それ以上多くを語らなかった。

話題は九条家の四番目の子どもに移った。

「四番目はね…五人の中で一番頭が良くて、しかもとてもハンサムだったの。蓮くんは叔父さんに少し似ているのよ。でも本当に残念なことに…」

ここで九条家の大奥様の表情は急に沈み、目が赤くなった。

安藤さんは、九条久遠のことが九条家の大奥様の心の傷であることを知っていた。そして今、九条家の大奥様が九条久遠の話題を口にしたことで、再び感情が高ぶり、悲しみに包まれていった。

普段なら、九条家の大奥様が自分からこの話を持ち出すことは決してなかったし、たとえ他人に聞かれても多くを語ることはなかった。

まさか高橋美咲の前で、こんなにもあっさりとこの話をするとは誰も思わなかった。

「お祖母様、どうか悲しまないでください。」高橋美咲はそっと手を伸ばし、九条家の大奥様の背中を優しく撫でて慰めた。

高橋美咲の柔らかな声には人の心を癒す力があるようで、その言葉に包まれながら九条家の大奥様の気持ちも徐々に落ち着いていった。

一度話し始めたからには、九条家の大奥様は途中でやめることなく続けた。「四男は本当に優秀だったの。でも若い頃に事故に遭って、ずっと植物状態のまま何年も病院のベッドで寝たきりなの。今も海外で治療を受けているけれど、医者には十年以上も植物状態の患者が目を覚ますことはないと言われていて……」

きっと九条久遠は、このまま一生を終えるのかもしれない。

それでも九条家の大奥様は諦めきれなかった。お金を使ってでも命を繋ぎ、いつか目を覚ましてくれることを祈り続けていた。

たとえ、その可能性が限りなく小さくても。

高橋美咲は、九条家にも植物状態の家族がいるとは思っていなかった。自分の母も長年植物状態だったから、九条家の大奥様の気持ちが痛いほど分かった。

彼女はそっと言った。「お祖母様、私の家にも植物状態の家族がいます。お気持ち、よく分かります。きっと目を覚ましてくれますよ!」

高橋美咲の言葉を聞いた九条家の大奥様は微笑み、「そんなふうに言ってくれる人はたくさんいたけれど、美咲が言うと、なぜか今までよりもずっと心が安らぐの。不思議と、四男もきっと目を覚ます気がしてくるわ」と言った。

なぜだか、九条家の大奥様は高橋美咲のことがとても好きだった。

他の人の慰めよりも、美咲の言葉の方がずっと心に響き、安心できる気がした。

九条家の大奥様はもう四男の話題にこだわらず、続けて言った。「それから五男もいるのよ。あの子も家に寄りつかないけど、娘の九条芽衣が今は留学中で、あと2年は卒業して帰ってこないの。」

高橋美咲はうなずいた。まさか自分にも年下の女の従姉妹がいるとは思っていなかった。

これでようやく、九条蓮が「家族が多い」と言っていた時の、どこか困ったような表情の理由が分かった気がした。