Chapter 532
今日こそ正体を暴く
高橋美咲は車を降りて九条凛と並び、九条蓮が駐車を終えて合流すると、三人で店内へ入った。
高橋美咲は最初、どこへ行くのか知らなかったが、雲上閣のような上品で洗練されたレストランだと分かると、急に不安になった。
こういうお店は絶対高いはず……。
黒川善、本当に容赦ないな……!
高橋美咲はこっそり九条蓮を見た。彼の給与カードはずっと自分が預かっていたから、手元にあまりお金がないはず。
幸い、カードにはまだ少し残っている。あとで自分が払おう。
高橋美咲は気を引き締めて、九条蓮と九条凛と一緒に店内へ入った。
すでに予約されていた最上級の個室では、黒川善が退屈そうに待っていた。隣には二人のシェフが立っていた。一人は高い白帽子をかぶった外国人で、いかにもプロらしい雰囲気だった。
彼は雲上閣が高給で引き抜いた総料理長で、その隣には中山服を着た男性が立っていた。
対照的な二人のスタイルはややちぐはぐだったが、同時にどこか期待感も漂わせていた。
個室のドアが突然開き、高橋美咲が先に入った。
黒川善はその後ろに九条凛が続いているのを見て、思わず目尻をぴくりとさせた。
くそっ、九条蓮に食事を奢らせるはずだったのに、高橋美咲はなぜ他の人まで連れてきたんだ?
これじゃ、どうやって仕掛ければいいんだ……。
黒川善は高橋美咲が九条凛を九条家のお嬢様だと知っていることは分かっていたが、今一番大事なのは、九条蓮が正体を隠して高橋美咲を騙していることだった。
もし九条凛が口を挟んできたら、九条蓮の正体を暴くこともできなくなる。
黒川善の表情は何度も変わったが、高橋美咲はその心中に気づかず、九条凛と九条蓮だけが彼の思惑を察していた。
黒川善の顔を見て、九条凛は思わず口元をほころばせた。
甘いわね!
お兄様の正体を暴こうなんて、絶対に好きにはさせない!
高橋美咲は黒川善に軽く挨拶し、空いている席に座った。
今の状況では、高橋美咲と九条凛が一つの陣営、九条蓮も少し離れて座っているが同じ側。黒川善だけが一人、まるで三人を相手にしているようだった。
黒川善は少し不満そうだったが、四人はそれでも食事を始めた。
高橋美咲は微笑みながら言った。「凛ちゃん、こちらは九条家の長女、九条凛よ。前に一度会ってるはずよね。」
黒川善はぎこちなく笑って「こんにちは、九条さん」と挨拶した。
九条凛も微笑み、「黒川さん、お噂はかねがね伺っています」と返した。
黒川善は九条凛と九条蓮の顔をじっと見比べ、わざとらしく何かに気づいたふりをして「おや、今気づいたけど、九条さんとご主人って、ちょっと似てますね」と声を上げた。
「本当?」高橋美咲はそれを聞いて、九条蓮と九条凛の顔を見比べた。
黒川善に指摘されるまで全く気づかなかったが、よく見ると確かにどこか似ている。特に眉や目元に、言葉にしにくい共通点があった。
高橋美咲が真剣な表情で自分と九条蓮を見比べているのを見て、九条凛も思わず緊張した。
九条凛は苦笑しながら「人が似てるなんて、よくあることですよ。美形はどこかしら似てくるものですし。似てるって言えば、私と美咲もすごく似てるって、学生時代は双子みたいだって言われてました」と説明した。
九条凛の言葉に、高橋美咲の意識はそちらに逸れた。
彼女は学生時代のことを思い出し、思わず口元がほころんだ。
黒川善とは幼い頃からの付き合いだが、その後の人生の道は違った。九条凛はその時期に出会った友人だった。
九条凛と知り合えたことも、高橋美咲にとっては楽しい思い出の一つだ。
高橋美咲はため息まじりに「そうそう、一緒にいる時間が長いと、どんどん似てくるものよ。蓮さんはいつも凛ちゃんを車で送ってるし、善くん考えすぎじゃない?」と言った。
黒川善はこの話題を広げたかったのに、九条凛にあっさりかわされてしまい、内心かなり苛立った。
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