Chapter 526
知りたい?誰とだったか
もし腰の痛みや体のあちこちの違和感がなければ、昨夜のことは夢だったのかと疑ってしまいそうだった。
美咲は布団をめくってベッドから降り、鏡を見ると、体にはいくつもの痕が残っていた。
昨夜の光景がふと脳裏をよぎり、美咲の頬はまた赤くなる。本当に恥ずかしい。
身支度を整えてリビングに出ると、テーブルには朝食がずらりと並び、九条蓮がラウンジウェア姿で待っていた。
……朝食を作っていたのか。
美咲は思わず小声でつぶやいた。「朝ごはん作ってたんだ。昨夜は夢かと思ったよ、蓮がここに来てくれるなんて。」
九条蓮はその言葉を聞くと目を細め、「夢かどうか、もう一度試してみるか?」と返した。
「い、いい……もういいから、早く朝ごはん食べよ。」美咲は慌てて手を振って断った。
九条蓮はその方面で本当に並外れている。あんなことを何度もされたら、とても耐えられない。
二人は一緒にダイニングテーブルについた。
美咲は昨夜、九条蓮が妙に嫉妬していたことを思い出し、少し試してみることにした。
少し考えてから、「実は昨日、紫苑に会いに行ったり母に会いに行ったりしたほかに、もう一人と食事したの。男か女か、当ててみて?」と言った。
九条蓮はちらりと美咲を見て、あっさりと「男だ」と答えた。
美咲は口元に微笑みを浮かべ、「うん、そう、男だったよ。誰だったか知りたい?」と続けた。
九条蓮の表情が冷たくなり、「黒川善」と二言だけ吐き出した。
「えっ……」美咲はもう少しじらすつもりだったが、まさか九条蓮が全部当ててしまうとは思わなかった。
もしかして、黒川善と食事したことを知っていたの?だから昨夜あんなことを聞いたの?でも本当のことを言わなかったから嫉妬した?
その説明なら、昨夜の九条蓮の態度とぴったり合う。やっぱり知っていて、しかも嫉妬して、あんな愛の罰を与えたのか!
じゃあ昨夜のあの探りは、自分から地雷を踏みにいったようなものじゃないか。
そう思うと、美咲は泣きたくても涙が出ないほど悔しかった。
腰を押さえながら、「ねえ、黒川善と食事したの知ってたの?」と尋ねた。
「うん。」九条蓮はうなずいた。
「どうして知ってたの?」
九条蓮は表情を変えずに「たまたまレストランの前を通りかかった」と言った。
美咲は困ったように、「じゃあ、なんで中に入って挨拶しなかったの?もう知ってたから、わざと私に聞いたんでしょ?」と返した。
九条蓮は口元をわずかに上げて、美咲の言葉を黙って認めた。
それを見て、美咲はますます損した気分になった。
そのとき、テーブルの上の電話が突然鳴った。美咲は手に取って画面を見ると、相沢翔からの着信だった。
不思議に思いながら通話を取り、耳に当てる。「もしもし翔、こんな朝早くどうしたの?」
「美咲、大阪にいるの?」
「うん、昨日大阪に着いたよ。ちょっと用事があって来たんだ。どうかした?」
相沢翔は少し困ったように、「お祖母様が入院してて、どうしても美咲に会いたいって言い張ってるんだ。昨日の投稿で大阪にいるのを見たから、来てもらえないかと思って連絡したんだ。」と話した。
相沢家のお祖母様は美咲の母方の祖母で、幼い頃から美咲をとても可愛がってくれた。母に連れられて帰省するたび、よく一緒に遊びに連れて行ってくれた。そんな祖母が入院したと知って、美咲が放っておけるはずがない。
祖母の病院の住所を聞き、美咲は急いで口元を拭い、出かける準備を始めた。
九条蓮は、美咲が電話の後で急に表情を変えたのを見て、「どうした?」と尋ねた。
「お祖母ちゃんが入院したの。すぐに会いに行かないと。」そう言いながら、美咲はふと思い出してスマホを取り出した。「飛行機のチケットを払い戻すね。全部片付いたら、数日後に東京に戻るよ。」
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