Chapter 525
嫉妬する彼
高橋美咲の体がふっと力を失い、九条蓮は彼女を抱き上げて寝室へと運んだ。
そして、そっとベッドの上に彼女を横たえた。
耳元や頬に、淡く散るキスが降り注ぐ。触れているようで触れていない、果てしない愛着が込められているようだった。
部屋が少し明るくなり、高橋美咲はようやく目の前の男の顔をはっきりと見た。本当に九条蓮だった。
美咲は口元に微笑みを浮かべ、手を伸ばして彼の頬に触れた。「どうやってここに来たの? それに、私の部屋に隠れてるなんて……びっくりしたよ。家を長く空けてたから、泥棒でも入ったのかと思った。」
九条蓮は片眉を上げた。「花泥棒か?」
その視線は高橋美咲の顔に鋭く注がれ、まるで彼女を引き裂いて丸ごと飲み込もうとするような激しさで、ゆっくりと下へと移っていった。
自分のことを花泥棒だなんて言われて、美咲は思わず頬を赤らめた。
何を言ってるの、この人……!
九条蓮は頭を片手で支えながら、深いまなざしで美咲を見つめ、何気ない口調で尋ねた。「今日はどこに行ってた?」
今日は九条凛としばらく“私立探偵ごっこ”をしていたものの、それでも九条蓮は高橋美咲がどう説明するのか聞きたかった。黒川善と食事したことを隠すのかどうか。
「うん……今日は前の職場の同僚に会いに行って、それから病院で母の様子を見てきたの。」
美咲は今日あったことをすべて話したが、その後の大事な部分はあえて伏せていた。
九条蓮の眉が思わずきつく寄せられる。彼の指が美咲のバラ色の唇に触れ、少し強く押し当てて、真実を話さない彼女に小さな罰を与えた。「それで? まだ続きがあるだろう。」
美咲はきょとんとした顔で見返す。「……もう終わりだよ?」
なぜ急にこんなことを聞くの? まるで自分が悪いことでもしたみたい。黒川善と食事しただけで、やましいことなんて何もないし、九条蓮だって彼のこと知ってるのに、どうしてこんなふうに問い詰めるの?
そう思った瞬間、美咲の頭にある可能性がよぎった。
もしかして、九条蓮は自分が黒川善と食事したことを知っていて、嫉妬しているのでは?
月明かりの下で九条蓮の表情をうかがうと、確かにそんな雰囲気が感じられた。美咲は目を細め、いたずらっぽく彼を試してみることにした。
高橋美咲がまだ真実を話さないのを聞いて、九条蓮の胸には重苦しい感情がこみ上げてきた。
もともと黒川善と高橋美咲の食事をそれほど気にしていなかったが、彼女がそれを隠そうとしたことで、どうしようもなく不機嫌になった。
まるで高橋美咲が自分に心を開いていないように感じたのだ。
九条蓮の目が暗くなり、美咲の細い手首をつかんで頭上に押さえつけ、さらに罰を与えるようにした。
濃密なキスが降り注ぎ、美咲はもうどうしていいかわからなくなった。
口から漏れる柔らかな声に、自分らしくない気がして、恥ずかしさと羞恥でいっぱいになる。
「九条蓮、まず離して……」思わず身をよじって抵抗し始めた。
だが、もはや抵抗は無意味だった。さっき彼を怒らせてしまったのだから、今さら交渉しても遅い。
最初のときは薬を盛られていて、何も感じなかった。二度目も体調が普通ではなかった。こんなに意識がはっきりしたまま彼と一緒になるのは、これが初めてだった。
美咲は怖さと、どうしようもないほどの欲しさの両方を感じていた。
結局、頭の中がいろんな思いでいっぱいになりながら、九条蓮にすべてを奪われていった。
あの騒動のあと、気がつけばもう翌朝になっていた。
高橋美咲が目を覚ますと、無意識に隣を見た。
九条蓮の姿はすでになく、バスルームのドアも開いている。そこにもいないことがわかった。
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