Chapter 52
お互いの小さな秘密を交換して
九条蓮は少し考えてから「妹が一人いる」と答えた。
高橋美咲は少し驚いた。「じゃあ、妹さんとはもう連絡を取っていないの?」
「ああ、取っていない」
「どうして?」と美咲は興味津々で尋ねた。
人の秘密を詮索するのは良くないと分かっていたが、どうしても気になってしまった。家族なのに、なぜ連絡を取らないのだろう。
九条蓮が答える前に、美咲は自分から「プライベートに踏み込みたいわけじゃないの。じゃあ、私も秘密を一つ話すね。実は私も父と絶縁状態なの。今はほとんど一人みたいなもの」と打ち明けた。
自分のことを先に話したのは、九条蓮を慰めたかったからだ。自分も彼と同じ立場だから、悲しむ必要はないと伝えたかった。
九条蓮はその気持ちを察し、口元に微かな笑みを浮かべた。本当に面白い子だ。
彼は穏やかに微笑んで「そうなのか」と返した。
「うん。だって父は私と母を裏切ったから」美咲は九条蓮を見つめて「今度はあなたの番。どうして妹さんと疎遠になったの?」と聞いた。
「妹は子どもが5人もいて、家のことで忙しくて、俺と連絡を取る暇がないんだ」九条蓮は適当に理由を作った。
「ご、ごにんも!?」美咲は思わず舌を巻き、心底驚いた。
子ども1人でも大変なのに、5人もいたら本当に目が回るほど忙しいはずだ。これなら兄妹で連絡が途絶えても仕方ない。
まさか九条蓮の妹が専業主婦だったなんて、美咲は夢にも思わなかった。
いつか必ず時間を作って、妹さんに会いに行こうと心に決めた。
つまり、九条蓮って本当はすごく寂しい人なの?
高橋美咲の胸が少しざわつき、深く考えずに口をついて出た。「私たち夫婦なんだから、これからは私があなたの家族になるよ」
言ってしまった瞬間、自分の舌を噛み切りたくなった。
慌てて取り繕うように説明した。「いや、そうじゃなくて……」
「わかってるよ。」九条蓮の声にはかすかな笑いが混じっていた。
もう言ってしまったものは仕方ない。これ以上説明すればするほどややこしくなるだけだと悟り、高橋美咲は大人しく口を閉じた。
「もう寝るね。おやすみ。」高橋美咲は気まずそうにその場を離れた。
「おやすみ。」
その頃、九条家本邸で夜更かしして小説を読んでいた九条凛が、立て続けにくしゃみをした。鼻をすすりながら「おかしいな。こんなに暑いのに、なんでくしゃみ?もしかして、ダーリンが私のこと恋しがってる?」と独り言をつぶやいた。
翌朝、高橋美咲は目を開けた。
開けた瞬間、目の前に九条蓮の端正な顔が大きく映り、瞳孔が縮み、全身の血が逆流するような感覚とともに心臓がドキドキし始めた。
えっ、なんで一緒に寝てるの!?
九条蓮は寝相が悪かった。今まさに手足を全部美咲に絡めて、まるで抱き枕にしているみたい!
使える方の手は彼の下敷きになり、ギプスの方はまったく動かせない。最悪だ。
九条蓮が「お姉さん」だったからまだよかったものの、やっぱり男だし、これはさすがにまずい。
高橋美咲は泣きたい気分だったが、どうにも動けず、仕方なく声をかけて起こすことにした。「九条蓮、起きて。重いよ」
九条蓮が目を開けた。柔らかくて華奢な体の感触が心地よく、目覚めたばかりなのに本能的な衝動が一気に高まった。
眉間にしわを寄せ、ただでさえ朝は気が立つのに、今はさらに火がついたように体が熱くなり、呼吸も荒くなる。
いつからか、高橋美咲に対する気持ちが変わってしまったことに気づいていた。
彼女の肩に顔を埋め、必死に気持ちを落ち着かせようとする。
高橋美咲は、彼の温かい息が首筋にかかるのを感じ、くすぐったくて妙に意識してしまう。今は体がぴったり密着していて、隙間もない。
頭の中は真っ白。なんで起き上がらないの?積み木遊びでもしてるつもり?
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