Chapter 519
妻を追って大阪へ
九条蓮が立ち上がり、上着を手にして部屋を出ていくのを見て、九条凛は彼が美咲を一人にしておけず、妻を追いかけて大阪へ向かうのだと悟った。
「お兄ちゃん!待って、私も行く……」
……
飛行機を降りた高橋美咲は、迷うことなく車で相沢紫苑の住所へ直行した。
相沢紫苑の住む場所は古びた住宅街だった。相沢紫苑の家庭環境があまり良くないことは前から知っていた。だからこそ、彼女は必死に努力し、上を目指していたのだ。
だが今や業界で相沢紫苑の名前を聞くことはない。もしかしたら、すでに転職してしまったのかもしれない。
高橋美咲の表情が曇る。あの頃、相沢紫苑はジュエリーデザインへの情熱を見せていた。簡単に諦めるような人には思えなかった。
何かあって、無理やり辞めさせられたのだろうか。
助けてくれるかどうかは別として、高橋美咲は相沢紫苑が今どうしているのか知りたかった。
道中いろいろ考えながら、ようやく相沢紫苑の家の前に着いた。
だが、近づいた瞬間、家の前には人だかりができており、その中から怒号が響いてきた。「今日中に金返せないなら、体売ってでも稼いでこい!」
「や、やめて……お願い、もう少しだけ待ってください。必ず返しますから!」
「はっ?無理だな。利子はもう十倍だぞ。レジ打ちのバイトで何年かかると思ってんだ?さっさと連れてけ。今夜は客を取らせろ。」
「ああっ……助けて……」
甲高い悲鳴とともに、屈強な男たちがか弱い女性を引きずり出し、人混みをかき分けて歩き出した。
野次馬たちは誰も止めようとせず、道を開けていく。
高橋美咲は、その暴力を受けているのが、まさに探しに来た相沢紫苑だとはっきり目にした。
高橋美咲の顔が険しくなり、低い声で「やめなさい」と一喝した。
相沢紫苑を引きずっていた男たちは、誰かが本気で止めに入ろうとしているのを見て、値踏みするような視線を向けた。
高橋美咲はラフな服装で、年も若く見える。小さく繊細な顔立ちは冷たさを湛えているが、目を離せない存在感があった。
男たちは、止めに入ったのがか弱そうな若い女の子だと分かると、途端に横柄な表情になり、そのうちの一人がいやらしく口元を歪めて言った。「なんだ、お前も首を突っ込む気か?俺たちの邪魔をするつもり?いいぜ、邪魔したいなら、あの女と代わってもらおうか!」
男たちも馬鹿ではない。高橋美咲のようなトップクラスの美人なら、相沢紫苑より遥かに高く売れることくらい計算できる。
相沢紫苑は高橋美咲の姿を見上げ、彼女だと気づくと顔に動揺が走り、慌てて叫んだ。「高橋部長!どうしてここに?早く逃げて!この人たちはヤバい人たちよ!お願い、早く!」
高橋美咲の表情は揺るがず、冷たい目で男たちを見据えたまま、その場を離れようとはしなかった。
高橋美咲が本当に立ち去らないのを見て、男たちはすぐに薄ら笑いを浮かべた。「お嬢ちゃん、さっき言ったこと、よく考えたか?あの女の代わりにお前が来るなら、あいつは解放してやるよ。」
相沢紫苑は必死に首を振り、「だめ!私の代わりになんてなれない。高橋美咲、早く逃げて!お願い、早く!」
相沢紫苑の言葉に、男たちの目がギラリと光った。「誰が口を挟めって言った?死にたいのか?」
男たちが相沢紫苑に手を出そうとしたその時、高橋美咲が声を上げた。「待って!」
男たちは高橋美咲を見て、次の言葉を待った。
「彼女はいくら借りてるの?」
まさか最初に聞かれるのが借金の額だとは思わず、もしかして肩代わりするつもりかと男たちは訝しんだ。
男の一人が凄んだ声で「七千五百万円だ!」と答えた。
相沢紫苑は慌てて首を振った。「違う、そんなはずない。最初は三百万円だけだったの。利息を何度も上乗せされて…」
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