Chapter 517
高橋美咲、九条インターナショナル追放の危機
……
まるで柳小路が長年の鬱憤をやっと晴らしたかのように、佐伯葉月を見つめてしみじみと言った。「葉月、今回のタイミングは本当に絶妙だったわ。もしあなたがいなかったら、私はきっと高橋美咲に踏みつけられてた!」
高橋美咲がメゾン・ヴェルヌのマネージャーになったことを思い出すと、柳小路はまだ納得がいかない様子だった。
佐伯葉月は軽く笑った。「何か予想外のことが起きるかもしれないと思って、ちゃんと準備しておいたの。」
柳小路は困惑したように小声でつぶやいた。「でも、どうして上層部は最終選考を飛ばしてまで高橋美咲をマネージャーに選んだの?」
どうしても納得できなかった。
なぜ九条社長は高橋美咲をそこまで評価しているのか。高橋美咲がこっそり九条社長と関係を持ったのでは、と疑ってしまう。
佐伯葉月は柳小路に意味ありげな視線を送り、心の中で冷たく嘲笑った。
今でも佐伯葉月は、どこで歯車が狂ったのか分からない。だから高橋美咲に勝てないのだと、改めて思い知らされる。
その思いを押し殺し、優しく柳小路をなだめた。「もしかしたら高橋美咲が何か裏技を使ったのかもしれないけど、そんなことはどうでもいいの。一番大事なのは、これからのニアとメゾン・ヴェルヌの勝負よ。高橋美咲が負けたら、九条インターナショナルから追い出されるんだから!」
柳小路はすぐに食いつき、「そうよ!私たちが頑張って、高橋美咲を九条インターナショナルから追い出さなきゃ!」と声を上げた。
高橋美咲さえいなくなれば、もう九条社長を誘惑される心配もない。
何かを思い出したように、柳小路は付け加えた。「今は高橋美咲の味方はいないけど、これから新しい人を探してくるかもしれない。その時は、私に対抗できる力を持つかも。」
佐伯葉月は自信たっぷりに口元を上げた。「心配いらない。業界のデザイナーは全部私が押さえてある。誰もメゾン・ヴェルヌには入らないわ。」
仕事が終わると、高橋美咲は九条蓮の車に乗り、一緒に帰宅した。
窓の外の景色がゆっくりと後ろに流れていくのを眺めながら、心が軽くなり、肩の荷が下りたような晴れやかな気分になった。
今日、佐伯葉月が現れた時は少し動揺したが、露木理人と柏木伊吹が自分のチームに加わると知って、張り詰めていた心がようやく落ち着いた。
二人がメゾン・ヴェルヌに加わるのは1ヶ月後だが、それでも十分な朗報だった。
高橋美咲は何かを思い出したように、スマートフォンを取り出して確認した。
午後に送ったメールには、まったく返信がなかった。
高橋美咲が連絡した相手は相沢紫苑というデザイナーで、かつて高橋グループにいた頃、自分の部下だった。あの大きな事件の後、自分が高橋グループを去ってから、相沢紫苑がどうしているのか分からない。
高橋美咲は相沢紫苑のデザインの才能をずっと高く評価していて、時間さえあれば必ず大成すると信じていた。
しかし、何年も経った今でも業界で相沢紫苑の名前を聞くことはなく、何があったのか全く分からなかった。
九条蓮は高橋美咲がうつむき、何か考え込んでいるのを見ていた。
何気なく尋ねた。「3ヶ月後のこと、まだ気にしてるのか?」
水城圭介に選りすぐりのデザイナー2人を引き渡させたのに、なぜまだ悩んでいるのかと不思議に思う。
高橋美咲は静かに首を振った。「ううん。ただ、昔のことを思い出してただけ。」
九条蓮が何か言いかける前に、高橋美咲が自分から口を開いた。「大きいお宝、知ってる?歴史って、驚くほど同じような形で繰り返すのよ……」
その呼び方を聞いて、九条蓮の眉がピクリと動いた。あの時、何気なくつけたあだ名を今さら後悔し始めていた。本当にひどい名前だ。
気にしないふりをして、軽く咳払いしながら尋ねた。「高橋グループにいた頃のことか?」
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