Chapter 515
静かに人を探して
自分の大切な人を狙われていると思うと、高橋美咲の心は百通りのもどかしさでいっぱいになり、どうしようもなく不機嫌だった。
でも、彼女は自暴自棄になるタイプではない。簡単には負けを認めない!
佐伯葉月にメゾン・ヴェルヌの人材を全員引き抜かれたって、また集め直せばいいだけのこと!
そう考えた高橋美咲は「森川茉莉、今すぐデザイナーや他の職種の募集案内を出して。まずは面接に誰か来るか様子を見ましょう」と指示した。
今できるのは、それしかなかった。
経験豊富で優秀なデザイナーを見つけるのは、本当に簡単なことじゃない。
ふいに、記憶の中からある名前が浮かび、高橋美咲の目に鋭い光が宿った。
もしかしたら、あの人に頼めるかもしれない——。
森川茉莉が書類を整理していると、突然見知らぬ番号から「すぐに社長の会議室に来るように」とメッセージが届いた。
その場で体がピンと緊張した。
森川茉莉はエレベーターで最上階へ上がり、恐る恐る顔を覗かせた。
驚いたことに、最初に目に入ったのはエレベーター前で待っている水城圭介だった。心臓がドキッと跳ね、すぐに背筋を伸ばして真剣な表情になる。「す、水城専務……」
水城圭介は軽く咳払いをして「ついてきて」と言った。
そう言うと、そのまま会議室へと歩き出した。
水城圭介の表情の読めない背中を見つめながら、森川茉莉は緊張のあまり手足の置き場も分からなくなっていた。
こんな大物幹部と対面するのは初めてで、緊張しないと言えば嘘になる。でもそれ以上に気になるのは、なぜ水城専務が自分を呼び出したのかということ。高橋美咲がメゾン・ヴェルヌを引き継いだことと関係があるのだろうか?まさか高橋美咲に辞めさせるよう言うつもりじゃ……?
不安を抱えたまま、森川茉莉は会議室に入った。
水城圭介はすでに中央の席に座っていて、森川茉莉が入ってくると前の席を見て「森川アシスタント、座って」と促した。
森川茉莉はおずおずと腰を下ろした。「水城専務、どうして私をお呼びになったんですか?」
水城圭介は手に持っていた二つのファイルを森川茉莉に差し出し、「今、高橋マネージャーがメゾン・ヴェルヌを任されているが、デザイナーが全員辞めてしまった。このままではニアに太刀打ちできない。これは業界でもトップクラスのデザイナー二人の資料だ。連絡を取って、メゾン・ヴェルヌに来てもらうように」と言った。
「給与や条件面はすでに話をつけてある。二人とも来ることに同意しているが、一ヶ月待つ必要がある。」
水城圭介の言葉に、森川茉莉はあまりの驚きで口が開きそうになった。
こんなあからさまな裏口入社、あまりにも衝撃的すぎる。まるで空腹のときにご飯を口まで運んでもらうようなものじゃないか。
半信半疑でファイルを受け取り、中の名前を見た瞬間、さらに息を呑んだ。
露木理人?柏木伊吹??
この二人は今や業界屈指のジュエリーデザイナーで、現在のヒット作の多くが彼らの手によるものだ。まさか水城専務がこの二人をメゾン・ヴェルヌに引き抜くとは!
水城専務が高橋美咲に与えるチート、強すぎない!?
森川茉莉の顔は興奮で真っ赤になり、口元が緩むのを抑えきれなかった。「水城専務!ありがとうございます。すぐ高橋マネージャーにこの朗報を伝えてきます!」
そう言って、森川茉莉は立ち上がり、部屋を出ようとした。
「待て!」
ドアに手が届く前に、水城圭介が呼び止めた。
森川茉莉は戸惑いながら振り返り、「水城専務、他にご指示は?」と尋ねた。
水城圭介は「高橋マネージャーには、私がこの二人を探したことは絶対に言うな。もし聞かれたら、二人が自分から応募してきたと言え、いいな?」と念を押した。
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