Chapter 514
九条インターナショナルからの排除(続き)
その言葉に、九条蓮の険しい眉が徐々に緩んでいった。
強引に対立するより、祖父の高橋美咲への偏見を変え、彼女の実力を見せる方が最善だと気づいた。
九条蓮は手を振った。「わかった。もう戻っていい。」
九条蓮がもう怒っていないと察し、しかも自分の言葉を受け入れた様子に、明さんはようやく安堵の息をついた。「それでは、失礼します。」
そう言って、明さんは部屋を出ていった。
明さんが去った後、九条蓮は思案顔を見せた。
メゾン・ヴェルヌの人間はみな佐伯葉月の側についた。今の高橋美咲にとって最大の問題は、使える人材がいないことだ。
しばらくして、九条蓮は水城圭介に電話をかけた。「国内外のトップジュエリーデザイナーを全員リストアップしてくれ。10分以内に全員の情報が欲しい。」
水城圭介の動きは非常に素早かった。ちょうど10分後、分厚い資料の束を九条蓮のもとへ届けた。
九条蓮は整った顔立ちのまま、目の前のファイルに視線を落とし、誰を高橋美咲のために選ぶべきかと眉をわずかにひそめて考え込んだ。
しばらくして、彼はファイルを机に置き、「これだけか?」と尋ねた。
九条蓮の表情が曇ったのを見て、水城圭介は候補者の情報に不満があるのだとすぐに察し、慌てて説明した。「九条さん、現在転職活動中のデザイナーの情報はすべてここにまとめました。」
九条蓮は「足りない。もっと探せ」と命じた。
水城圭介は少し気落ちし、小声でぼやいた。「はあ……でも本当に優秀なデザイナーは今みんな他社にいるし、理由もなく辞めてくれるわけないし……まさか引き抜けってこと?」
「できる。」
水城圭介は一瞬言葉に詰まった。「……わかりました。さらに厳選してみます。」
どうやら九条蓮は本気で高橋美咲を守り抜くつもりらしい。水城圭介は気を引き締め、もう絶対に失敗できないと肝に銘じた。
この瞬間、水城圭介は九百五十回目となる真壁直人のいた日々を懐かしく思った。
うう、真壁直人は一体いつ戻ってくるんだ……。
厳選と高額報酬の提示を重ねた結果、水城圭介は3人のデザイナーを見つけ出した。いずれも業界トップクラスの人材で、メゾン・ヴェルヌへの転職に同意したが、元の会社の退職手続きに1ヶ月ほどかかるという。
元の会社を辞めるには、まだ少し時間が必要だった。
水城圭介の報告を聞いた九条蓮は、深くうなずき「うむ。その3人のほかにも、この2人も何とかしてメゾン・ヴェルヌに入社させろ」と指示した。
そう言って、さきほど水城圭介が調べた転職希望者リストの中から選んだ2人の資料を手渡した。
目の前の2つのファイルを見て、水城圭介は頭が痛くなった。
どうやって実現しろっていうんだ……。
九条蓮の今の立場は絶対に明かせない。つまり、直接高橋美咲にこの資料を渡すことはできない。となると、誰か別の人を通すしかない。
あれこれ考えた末、水城圭介の脳裏にすぐに一人の人物が浮かんだ——高橋美咲のアシスタント、森川茉莉だ!
……
高橋美咲は新しいオフィスに座り、どこか不安げな表情を浮かべていた。
良い知らせは、今や自分がメゾン・ヴェルヌのマネージャーになったこと。悪い知らせは、メゾン・ヴェルヌに残っているのが自分一人だけということだった。
いや……完全に一人きりというわけではない。
高橋美咲は隣にいる森川茉莉を見て、心から「森川茉莉、まだ一緒にいてくれて本当にありがとう」と言った。
森川茉莉は高橋美咲の言葉を聞くと、すぐに首を振って「高橋マネージャー、そんなこと言わないでください。私はずっとついていきます」と答えた。
佐伯葉月がどうして急に九条インターナショナルに入ったのか。もしかして九条蓮を狙っているのだろうか。
やっぱり、地位も背景もあるお嬢様は強い。自分の力で簡単に九条インターナショナルに入り、新ブランドまで立ち上げる。こんなに積極的にアプローチされたら、九条蓮もいつまで耐えられるか……。
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