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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 512 - 招かれざる客(続き2)

Chapter 512

招かれざる客(続き2)

九条社長の恋人ですら高橋美咲と競い合い、メゾン・ヴェルヌの責任者の座を得られなかったのに、佐伯葉月は現れた途端に新ブランドを丸ごと任されるとは、どれほどの力があるのか。

柳小路はもう見限られたのか?

柳小路に向けられる視線には、探るようなものや、面白がるようなものが混じっていた。皆が密かに憶測を巡らせている。

柳小路自身も、まだショックから抜け出せずにいた。

佐伯葉月は以前、メゾン・ヴェルヌへの出資を申し出ていたが、責任者の座は得られなかった。なのに今や、こんなポジションを手に入れている。家柄が良いと、やはり特権があるものだと、柳小路は嫉妬と羨望を感じていた。

しばらくして、ようやく誰かが状況を理解し始めた。

「えっ、九条インターナショナルが新ブランドを立ち上げるって、それもジュエリーブランド?じゃあメゾン・ヴェルヌのライバルになるってこと?」

「そうだよね。なんだか不可解だよ。こんなことする必要あった?」

「何か裏事情でもあるのかな?」

「ねえ……柳小路さんが見限られて、佐伯葉月さんが九条社長の新しい恋人ってこと?」

……

皆はまるで核心を突いたかのような気分になった。

もしそうでなければ、佐伯葉月のような謎の外部の人間が、来た途端にこんな優遇を受ける理由が説明できない。

たちまち、佐伯葉月を見る周囲の目が変わった。

頭の回転が速い人は、すでに佐伯葉月に取り入ろうと密かに考え始めていた。

議論と憶測が渦巻く中、佐伯葉月は何も説明せず、ただ静かに微笑んで立っていた。

やがて皆のざわめきが少し収まると、彼女はようやく微笑みながら「私の新ブランドは「Nia」といいます。Niaは今、優秀な人材を求めています。もしNiaに加わりたい方がいれば、ぜひ声をかけてください。ポジションは優先的にご用意しますし、絶対に損はさせません」と言った。

その言葉が出た瞬間、メゾン・ヴェルヌの社員たちは一斉にざわついた。

もともとメゾン・ヴェルヌでの自分の立場は高くなく、しばらく昇進の見込みも薄い。

そんな中、佐伯葉月が公然と手を差し伸べてきたのだ。皆、心が揺れ動き、運が良ければ一発逆転できるかもしれないと期待した。

森川茉莉は拳を握りしめた。

この女が現れた途端、新ブランドのマネージャーになり、それも自分たちと同じ業種。まるで宿敵ではないか。

しかも堂々とメゾン・ヴェルヌの人材を引き抜こうとしている。高橋美咲のことなど眼中にないという態度だ。

最悪なのは、メゾン・ヴェルヌの多くの人が実際に心を動かされていることだった。

柳小路は、周囲の憶測に最初は不快感を覚えていたが、佐伯葉月の言葉を聞いた途端、「葉月さん、私もご一緒します!」と即座に口にした。

彼女と高橋美咲は完全に対立している。今や高橋美咲がメゾン・ヴェルヌの責任者となった以上、ここに残れば標的にされるだけ。将来など望めない。

それならいっそ佐伯葉月の側についた方が、新しいチャンスがあるかもしれない。

佐伯葉月は微笑んで「素晴らしいわ、柳小路さん。あなたが来てくれるなら、デザインディレクターを任せます。これからNiaのデザインはすべてあなたにお任せします」と言った。

なんと!皆は驚愕した。

まさか佐伯葉月が、こんなにも簡単に新ブランドのデザインディレクターに就任するとは思わなかった。

皆は一歩でも遅れまいと、次々に声を上げ始めた。

「私も行きます!」

「私もNiaに入ります!」

「私も!」

あっという間に、柳小路が先陣を切り、皆を煽る形で、メゾン・ヴェルヌ側の人間が全員いなくなってしまった。