Chapter 511
高橋美咲、メゾン・ヴェルヌ責任者に就任(続き)
「高橋部長、メゾン・ヴェルヌの責任者就任おめでとうございます!」
「あら、まだ高橋部長なんて呼んでるの?これからは高橋マネージャーでしょ!」
「そうそう、うっかりしてた。みんなで高橋マネージャーにご挨拶しよう。」
その声に合わせて、皆が一斉に「高橋マネージャー、よろしくお願いします!」と声を揃えた。
周囲の祝福の声を聞きながら、高橋美咲はようやく事態を少しずつ理解し始めた。
自分が本当に……メゾン・ヴェルヌの責任者になったのだ。
森川茉莉は誰よりも喜んでいた。なにしろ彼女は高橋美咲のアシスタント。高橋美咲がメゾン・ヴェルヌの責任者になれば、自分も一緒に昇進できる。「すごいです!高橋部長、ついに皆を打ち破って部長からマネージャーに昇進ですね。このスピード、羨ましすぎます!」
その言葉に、柳小路の顔はみるみる真っ青になり、今にも水が滴りそうなほど暗くなった。
森川茉莉が「皆を打ち破って」と言ったのは、まさに自分のことではないか。
やがて高橋美咲は、もう遠慮せず皆の祝福を素直に受け入れた。もともとメゾン・ヴェルヌの責任者を目指して選考に参加したのだから、こうして直接就任できるなら、素直に喜ぶべきだ。
彼女は落ち着いた笑顔で「皆さん、ありがとうございます。これから一緒に頑張りましょう」と言った。
すぐに皆がうなずき、賛同の声を上げた。
そのとき、突然入口の方でざわめきが起こった。
高橋美咲が入口に目を向けると、佐伯葉月が中年の男性と一緒に入ってくるのが見えた。高橋美咲はその男性に見覚えがあった——あの日、九条家の大奥様の誕生日パーティーを仕切っていた人物だ。きっと九条家の関係者なのだろう。
彼女は眉をひそめ、なぜ佐伯葉月が突然ここに現れたのか分からずにいた。
柳小路も佐伯葉月の姿を見て、困惑した表情を浮かべた。
なぜ彼女がここに?
佐伯葉月は優雅に歩み寄り、一目で九条蓮の姿を見つけた。
だが、九条蓮が怒ることは心配していなかった。すでに九条会長が彼女の要望を承諾し、さらに側近の一人である明さんまで同行させてくれたのだ。
明さんは前回、九条蓮を助けた後、九条会長から処分を受けた。しかし、長年九条家に仕えてきた古参の使用人ということもあり、解雇はされなかった。そして今、再び九条会長の側に戻っている。
今回こそはしっかりと役目を果たさなければ、今度こそ本当に居場所を失うかもしれない。
佐伯葉月は高橋美咲に視線を向け、口元に薄い笑みを浮かべて「高橋美咲さん、メゾン・ヴェルヌの責任者就任、おめでとうございます」と言った。
高橋美咲は警戒心を強めて目を細めた。佐伯葉月の笑みには何か裏があるように感じた。
今度は何を仕掛けてくるつもりなのか。
佐伯葉月は後ろの明さんに目配せし、前に出て話すよう合図した。
明さんはうなずいて一歩前に出ると、堅苦しい口調で「皆さま、こんにちは。九条インターナショナルより新たな社内事業調整についてお知らせいたします……」と話し始めた。
九条インターナショナルの内部調整の話に、皆はさらに困惑した。
明さんは回りくどい言い方をせず、はっきりと「九条ホールディングスは、九条インターナショナル傘下に新たなジュエリーブランドを立ち上げ、ジュエリー事業を全面的に拡大することを決定しました。本日より、新ブランドはすべて佐伯葉月さんが統括いたします!」と告げた。
その言葉が終わるや否や、場は静まり返った。
まるで皆、事態を飲み込めず、この突然現れた佐伯葉月という人物が何者なのか分からない様子だった。
柳小路は九条社長の恋人だ。それなのに、この佐伯葉月という女性は一体どんな強力な後ろ盾があるのか。
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