Chapter 508
自分でできる?(続き)
だが今になってようやく理解できた。柳小路の話していた九条社長は、九条蓮本人のことではなかったのだ。
たとえ九条蓮でなくても構わない。柳小路を武器として使えるならそれでいい。高橋美咲の相手をさせるには、これ以上ない手だ。
佐伯葉月は笑いながらなだめるように言った。「なんでもないの。ただ、あなたが九条社長に気に入られて本当にうらやましいだけ。これからもよろしくしてね。」
柳小路は普通の家庭の出身だが、佐伯葉月は東京の名家に生まれたお嬢様だ。
そんな裕福な令嬢が自分に頭を下げて、面倒を見てほしいと頼んでくるのを聞いて、柳小路はこの上なく満足だった。
柳小路は軽く鼻で笑い、「そこまで言うなら、これからは少しは面倒を見てあげるわ」と寛大に言った。
佐伯葉月はその言葉を聞くと、口元に軽蔑の笑みを浮かべながらも、表向きは柳小路に感謝の言葉を述べていた。
柳小路は電話の向こうで佐伯葉月が自分を嘲っていることなど、まったく気づいていなかった。
それでもまだ気が済まない柳小路は、佐伯葉月に愚痴をこぼした。「今回はたまたま失敗しただけ。次はうまくやって、九条社長の力も借りれば、あの子を抑えるのなんて簡単よ。」
佐伯葉月は「それじゃあ、メゾン・ヴェルヌの責任者就任、お先にお祝いしておくわ」と言った。
少し間を置いてから、彼女は続けた。「もし本当に成功したら、その時は佐伯家を代表してメゾン・ヴェルヌに出資するわ。そうすれば、あなたもすぐに実績を積めるでしょうし。」
柳小路は佐伯葉月が出資したいと言ったのを聞いて、当然ながら嬉しかった。
佐伯葉月と組んで正解だったと、心から思った。
実際のところ、佐伯葉月が柳小路に出資したいと言ったのは、彼女を助けるためではなく、九条蓮に近づく口実を作るためだった。仕事のやり取りがあれば、九条蓮と会う機会も格段に増える。
九条家の大旦那様は自分のことをとても気に入ってくれているし、九条蓮もきっと心変わりして自分に夢中になるはずだと信じていた。
九条家の大奥様の誕生日会で何度も挫折を味わった佐伯葉月だったが、全くめげていなかった。むしろ、打ちのめされるほどに、ますます闘志を燃やしていた。
佐伯葉月はそんな思いを胸に隠し、「だから責任者の最終選考では、絶対に全力を尽くしてね。決まったら、私が盛大にお祝いするから」と言った。
柳小路は笑顔で同意した。
電話を切った後、佐伯葉月は冷たく鼻で笑った。
自分が九条蓮を手に入れたと勘違いして、柳小路はすっかりいい気になっている。
佐伯葉月の目が陰り、思案げな表情を浮かべた。
実は、今回ベルタ・ジュエリーが競合に名乗りを上げたのは、高橋美咲が九条家の大奥様と知り合いだからだけではなく、九条蓮が裏で煽っていた可能性も高い。
自分の知る限り、倉本隆氏は非常に厳格な人物で、身内びいきなど絶対にしない。九条家の大奥様だけのために高橋美咲を特別扱いすることはあり得ない。
柳小路の後ろにいる九条氏は偽物なのだから、彼女を助けることはない。となれば、次の競争でも高橋美咲が柳小路を再び打ち負かす可能性が高い。
何か手を打たなければ。
佐伯葉月はすぐに完璧な策を思いつき、口元を上げた。
そろそろ大阪に行って、九条家の大旦那様の様子を見に行く時だ。
…
大阪、九条家本邸。
佐伯葉月は九条家の大旦那様に健康食品を手渡し、穏やかに微笑んだ。「九条家の大旦那様、最近ますますお元気そうですね。」
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