Chapter 507
自分でできる?
高橋美咲は突然身を乗り出し、彼の口を手でふさいだ。
そんなこと、わざわざ言われなくても分かっている。
もし九条蓮も薬を盛られていたら、きっと自分以上に理性を失っていたに違いない。
九条蓮は片手で高橋美咲の腰を支え、もう一方の手で彼女のズボンを下ろした。
もう逃げられないと悟った高橋美咲は、力が抜けてベッドに横たわり、顔を枕に埋めた。
九条蓮はこれまで女性と関わったことがなかったから、どうしてもぎこちなくて乱暴になってしまった。高橋美咲にとって良い経験にはならず、それが申し訳なくてたまらなかった。
高橋美咲が薬の影響を受けていたとはいえ、自分にも責任があると感じていた。
次はもっと優しくしよう。もう二度と高橋美咲を傷つけたくない——九条蓮はそう心に誓った。
高橋美咲は唇を軽く噛み、必死に耐えながら小さくつぶやいた。「もう終わった?あちこち触らないで……」
か細い声で訴える高橋美咲に、九条蓮の指がふと止まり、彼女を見上げた。
「もう少しで終わる。」
佐伯葉月もそんな結果は望んでいなかった。眉をひそめて、「もう手は尽くしたの。桜井奈緒の方で何か問題が起きたみたいで、私にはどうしようもなかった」と答えた。
柳小路は苛立ちを隠せず、電話越しに「じゃあ、これからどうするつもり?」と問い詰めた。
佐伯葉月はしばらく黙った後、「今はもう桜井奈緒が逮捕されてる。私たちに火の粉がかからなかっただけでも良かったと思うしかないわ。また高橋美咲をどうにかするチャンスはある」と続けた。
柳小路は不満げに舌打ちし、電話を切った。
東京の夜は静かに更けていった。
一方、高橋美咲はまだ九条蓮のことを思い出して、顔を赤らめていた。
彼女の心臓は、まだ落ち着きを取り戻せずにいた。
九条蓮の優しい手つきと、あの静かな微笑みが、どうしても頭から離れなかった。
自分の気持ちを整理しようと、彼女はしばらくバスルームの鏡を見つめていた。
やがて、高橋美咲は深呼吸をして、ようやくリビングに戻る決心をした。
その時、九条蓮はソファに座り、静かに彼女を待っていた。
二人の間に、微妙な空気が流れていた。
少し間を置いて、彼女は続けた。「もうあの人は逮捕されたわ。この件で私たちに火の粉が降りかからなかっただけでも、良かったと思うしかない。また次の機会に高橋美咲をどうにかすればいい。」
柳小路は納得できない気持ちを抱えつつも、これ以上どうしようもないことも理解していた。
佐伯葉月は言った。「次は、最終的な責任者選出が残ってる。今一番考えるべきは、どうやって高橋美咲を抑え込むかよ。」
佐伯葉月の言葉を聞いた瞬間、柳小路の顔色が一気に曇った。
彼女は鼻で笑い、「本当なら九条社長が全部手配してくれてたのに。まさか高橋美咲が倉本隆夫人と知り合いだったなんて、思いもしなかった!九条社長の手も届かないなんて!」と吐き捨てた。
電話の向こうで佐伯葉月はしばらく黙り込んだ。
そして突然、「あなた、本当に九条社長の彼女なの?」と問いかけた。
その言葉を聞いた瞬間、柳小路は激昂した。
その一言は柳小路の逆鱗に触れたようで、まるで嘲笑されたかのような気分になった。
柳小路は怒りをあらわにして言った。「何を疑ってるの?もちろん私は九条社長の彼女よ!あの日、九条家の誕生日パーティーで、九条社長が私と付き合ってるって公言したじゃない!」
佐伯葉月の目がわずかに動いた。柳小路が本当に九条社長の彼女なのか、ずっと疑っていたのだ。
この間調べた限り、九条蓮の周りには高橋美咲以外誰もいなかった。柳小路がどこから現れたのか、不思議でならなかった。
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