Chapter 504
九条蓮にすべてを打ち明けたい(続き)
やがて九条蓮は高橋美咲を見上げ、その視線はどこか複雑で不可解なものだった。「つまり、九条悠真に九条家軽井沢別邸で襲われたということか?」
「うん。」高橋美咲は否定せず、ただその場に立ち尽くして裁きを待った。
当時は薬で意識が朦朧としていたとはいえ、起きた事実は変わらない。自分には逃れようがなかった。
九条蓮は尋ねた。「それは誰に聞いた?」
「……九条悠真だったの。」高橋美咲は、今はもうずっと気が楽になっていた。最悪の事態も覚悟していたので、九条蓮に詳細を聞かれても、もう何も隠さず、素直に口に出せるようになっていた。
九条蓮は続けて尋ねた。「九条悠真は、具体的に何て言ったんだ?」
高橋美咲は小さな声で答えた。「あの時、別邸のスタッフに聞いたら、九条家軽井沢別邸のオーナーが私を助けてくれたって言われたの。それで、オーナーが誰か調べに行ったら、九条悠真が突然現れて……。その日、彼も別邸にいて、自分が助けたって言ったの。」
九条蓮の眉間にはさらに深い皺が刻まれた。
「今まで俺に近づくのを避けてた理由は……これがバレるのが怖かったからか?」
高橋美咲は深く息を吸い、うなだれながら答えた。「そうよ。もし蓮が知ったら……私のこと、もういらないって思うんじゃないかって、ずっと怖かった。」
今こうして自分の口から言っても、結局は同じ結果になるかもしれない。でも、少なくとも心の重荷は下りて、毎日怯えて暮らす必要はなくなった。
高橋美咲は話し終えると、うつむいたまま、九条蓮の裁きを静かに待った。
秒針の音だけが響き、時間がゆっくりと過ぎていく。
九条蓮は何も言わなかった。奇妙な沈黙が部屋を包み、空気さえも凍りついたようだった。
高橋美咲がもう耐えきれず、何か言おうとしたその時、不意に低い笑い声が聞こえた。九条蓮のものだった。
……笑ってる?
高橋美咲が想像していたのは、彼が激しく問い詰めてきたり、大騒ぎして離婚を突きつけてくる展開だった。
まさか、今目の前で九条蓮が笑うなんて、思いもしなかった。
どういうこと?
あまりの衝撃で、頭がおかしくなったのかもしれない。
「蓮、大丈夫?」高橋美咲は心配そうに彼を見つめて言った。「そんなに気を落とさないで。確かに私が悪かったけど、わざと浮気したわけじゃないから……そんなに気にしないで……」
どう慰めていいか分からず、言葉は支離滅裂になりながらも、必死で何かを伝えようとした。
こんな状況になっても、結局自分が九条蓮を慰める羽目になるなんて――高橋美咲は泣きたくなった。
どうして私ばっかり、こんなに惨めなの!
九条蓮の口元の微笑みは消えないまま。彼は立ち上がり、高橋美咲の前に歩み寄ると、両手で彼女の肩を包み込んだ。そして見下ろしながら、ゆっくりと言った。「九条家軽井沢別邸で君を助けたのは……俺だ。」
九条家軽井沢別邸で君を助けたのは俺だ!助けたのは俺だって!?
助けてくれたのは九条蓮だった!!!
そんなはずない。絶対に彼じゃないはず。
高橋美咲は九条蓮の言葉を全く信じられなかった。慰めるために嘘をついているだけだと思った。
きっと、九条蓮は過去のことを気にせず、まだ一緒にいたいから、こんな嘘をついているんだ。
そう思うと、ますます涙がこぼれそうになった。
九条蓮は本当にいい人だ。悪いのは自分。裏切ったのは自分なのに。
高橋美咲が信じていないのを見て、九条蓮は少し困ったような顔をして、もう一度強調した。「美咲、俺が九条家軽井沢別邸で君を助けたって言ったのは、慰めでも嘘でもない。本当なんだ。助けたのは俺で、九条悠真じゃない。」
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