Chapter 502
彼女はきっと、また私のもとへ
高橋美咲は泣き出してしまい、まるで心が壊れたようだった。
九条蓮は眉をひそめ、しゃがみ込んで高橋美咲の顔を覗き込み、心配そうに尋ねた。「大丈夫か?まだ辛い?医者を呼ぼうか?」
高橋美咲は、以前九条家軽井沢別邸で目覚めた時のことを思い出した。
すべてを失ったような無力感と、九条蓮に申し訳ないという罪悪感。
幼い頃に高橋正人と継母の間で見てしまった出来事が、ずっと心の影となっていた。その後、九条蓮と接するうちに、男性に近づかれることへの抵抗は少しずつ薄れていった。
だが、九条家軽井沢別邸での出来事は、また元の状態に逆戻りしたようなものだった。
この感覚に、もう気が狂いそうだった。
この間、九条蓮に近づくたびに苦しみ、激しい痛みに襲われていた。本当はずっと彼に打ち明けたかったし、正直に話すタイミングも決めていた。
でも、失うのが怖くなればなるほど、不安が募っていった。
突然、高橋美咲の心に強い勇気が湧き上がった。今このタイミングで、九条蓮にすべてを話そうと決意した。たとえ彼が知った後に離れていっても、それでいいと思えた。
でも、その前にどうしてもしたいことがあった。
心のままに、高橋美咲は突然九条蓮の首に腕を回し、彼を引き寄せて、赤く染まった唇を重ねた。
九条蓮は一瞬驚き、高橋美咲からキスされるとは思っていなかった。
これは薬の影響で普段の彼女ではない、と自分に言い聞かせる。
九条蓮は受け身のまま高橋美咲に応じ、彼女の細い腰をそっと支えた。
心の壁を乗り越えた高橋美咲は、すっかり気持ちが楽になった。今の自分の選択は間違っていないと確信できた。
九条蓮に触れたい、彼と一緒にいたい——そう強く思った。
やがて二人のキスはどんどん激しくなり、九条蓮もすでに自制心を失いかけていた。
九条蓮は高橋美咲を一気に抱き上げ、寝室へ運ぶと、そのままベッドに放り投げた。濡れた服のままシーツはぐちゃぐちゃになった。
高橋美咲は潤んだ瞳で九条蓮を見つめ、彼への強い想いがあふれていた。その姿に、九条蓮は彼女を激しく求めずにはいられなかった。
すでに経験のある男として、目の前の美しい女性を前にして、どうして理性を保てるだろうか。
九条蓮は高橋美咲の上に覆いかぶさり、彼女の脚の間に身を滑り込ませる。そして優しく問いかけるように見つめながら、「美咲、もう一度やってみようか?」と囁いた。
高橋美咲はまだ完全に意識がはっきりしているわけではない。そんな彼女に尋ねるのは、ある意味ずるいことだった。
だが、高橋美咲が徐々に慣れるのを待つより、こうした機会を活かした方がいいと九条蓮は思った。
九条蓮は高橋美咲をじっと見つめ、低くかすれた声で「いい?」と重ねて聞いた。
高橋美咲はぼんやりとした声で「うん……」と頷いた。
九条蓮が欲しい。ずっと一緒にいたい。
高橋美咲が頷いたのを見て、九条蓮はもう彼女の意識の有無など気にしなかった。この女性の前では、まったく自制心が効かない。
九条蓮の目はさらに深くなり、声もかすれていた。「優しくするよ。」
その言葉と同時に、九条蓮はそっと唇を重ねた。
実際、高橋美咲も完全に意識を失っていたわけではない。体はだるく、頭もぼんやりしていたが、自分が何をしているのかははっきり分かっていたし、これからすることに後悔はなかった。
もし本当に別れることになっても、九条蓮と過ごした美しい思い出が残るだけで十分だった。
あの最低な九条悠真の影だけが残るより、ずっといい。
高橋美咲は小さく九条蓮の名前を呼んだ。「蓮……あなた……」
やがて部屋は熱気に包まれ、二人は何の迷いもなく、すべてを委ね合った。
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