Chapter 501
またあのイケメン(続き)
何が「俺の女」だ?高橋美咲は自分の彼女なのに!
自分は男なら誰でも一度は犯すような過ちをしただけで、ほんの少し高橋美咲と距離ができただけだ。本当に好きなのはやっぱり高橋美咲だと気づいたのに。
目を充血させて九条悠真は叫んだ。「高橋美咲は俺の彼女だ!必ず俺の元に戻ってくる!」
九条悠真の取り乱した様子を見て、九条蓮は嘲るような表情を浮かべ、地面に倒れている桜井奈緒に目を落とし、「本当の女を病院に連れて行かなくていいのか?今かなり危なそうに見えるが」と言った。
桜井奈緒はさっき九条悠真に強く突き飛ばされたばかりだった。
怪我自体はそれほど重くなかったが、精神的にかなり参っていて、今はかなり怖い様子だった。
九条悠真は桜井奈緒に一瞥もくれず、九条蓮の腕の中の高橋美咲にしか意識が向いていなかった。ただ高橋美咲を奪い返したい一心だった。
九条蓮が高橋美咲をしっかりと抱きしめ、半歩も近づけさせない様子に、九条悠真の目には悔しさが浮かんだ。
九条悠真が何か言う前に、九条蓮はすでに彼女を抱いたまま背を向けてその場を去った。
九条悠真は数歩追いかけて、「お前、本当に九条蓮なのか!」と叫んだ。
数日前の九条家の大奥様の誕生日パーティーで、九条悠真は九条蓮の姿を見かけなかった。その後、九条家の大旦那様が退院した際には水城圭介を見かけたが、今目の前にいるこの美青年とはまるで違う印象だった。九条悠真は、この男こそが本物の九条蓮ではないかと疑い始めていた。
九条悠真の問いかけを聞いた九条蓮の目が一瞬暗くなる。
九条蓮はほんの一瞬だけ立ち止まり、何も言わずにそのまま大股で立ち去った。
九条悠真が再び追いかけようとしたその時、突然誰かが彼の腰に腕を回した。桜井奈緒は九条悠真が立ち去ろうとするのを見て、慌てて駆け寄り、彼をしっかりと抱きしめた。「悠真、やり直せないかな?もう一度チャンスをちょうだい。私、本当にあなたが好きなの……」
「どけ!」
……
九条蓮は高橋美咲を抱きかかえ、自分の車に乗せると、身をかがめてシートベルトを締めてやった。
この時、高橋美咲の神経は完全に崩壊しており、意識ももうろうとしていた。
高橋美咲の頬が異様に赤く染まっているのを見て、九条蓮は何が起きたのかすぐに察した。
九条蓮の表情は一気に険しくなり、目には怒りが浮かぶ。運転席に戻ると、すぐにスマートフォンを取り出し、井上勝に電話をかけた。「桜井奈緒が傷害の疑いありだ。すぐに対応して、逮捕してくれ。」
少し間を置いてから、九条蓮の目にはさらに冷たい光が宿る。「九条悠真も共犯だ。」
そう言い終えると電話を切り、スマートフォンをしまい、車を発進させた。
二人はすぐに代官山パークレジデンスへ戻った。
九条蓮は高橋美咲をバスルームに連れて行き、蛇口をひねって水を浴びせた。
高橋美咲の異常な状態を和らげるには、もっと早い方法もあったが、九条蓮はそれを選ばなかった。
以前も同じように薬の影響を取り除いたことがあったが、その時の出来事が高橋美咲に心の傷を残してしまった。それ以来、高橋美咲は九条蓮に対して強い抵抗感を持つようになった。もう二度と彼女を傷つけて、関係を悪化させたくなかった。
冷たい水が頭から降り注ぐうちに、高橋美咲は徐々に意識を取り戻していった。
見慣れた端正な顔が目の前にあり、気を失う直前の出来事を思い出すと、高橋美咲の目にはすぐに涙が浮かんだ。
「九条蓮……」
もし九条蓮が来てくれなかったら、九条悠真に無理やり連れて行かれそうになったあの瞬間、彼女の心は絶望しかなかった。
それは心の奥底にある恐怖からか、もう二度と自分を失いたくないという思いからかもしれない。
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