Chapter 497
高橋美咲、あんたにもこんな日が来るなんてね
九条悠真は、前を歩く人影を、近すぎず遠すぎずの距離で追いかけ、その人物がレストランの中庭へと入っていくのを見届けた。
このレストランは完全予約制のプライベートな店で、内装も非常にセンスが良い。どこを見ても細部までこだわり抜かれており、店の中央には小さなオープンエアの中庭まで設けられている。
店内で食事をしていて息苦しくなった時は、ここで散歩することもできる。
だが、ここで食事をする客のほとんどは中庭に出てくることは滅多にない。この小さな庭は店内で最も人目につかない場所であり、少しの物音でもはっきりと聞こえてしまう。
追っていた人物が中庭に入るのを見て、九条悠真は目を細め、意外そうな表情を浮かべた。
彼女が自分を追ってきたのだと思っていたが、どうやらそうではないと分かり、かえって好奇心が湧いてきた。
九条悠真は足音を殺し、できるだけ静かに生い茂る植え込みの近くへとそっと近づいた。
十分に近づいた時、茂み越しに聞き覚えのある声が聞こえてきた——
「あとで、碧海の個室にいる女にこのお茶を飲ませて。ちゃんとやれば、報酬はちゃんと払う。残りは約束通りカードに振り込むから」
「分かりました」
その直後、慎重な足音が遠ざかっていった。
九条悠真の表情が一気に険しくなる。
碧海はこのレストランの個室の一つの名前であり、高橋美咲はまさにその碧海から出てきたばかりだった!
本来ならここで止めることもできたが、なぜかふと何かを思い出し、九条悠真はそのまま動かず、誰にも気づかれないように静かにその場を離れた。
…
高橋美咲が個室に戻ると、倉本隆夫妻ともう少し談笑した。
倉本隆氏は高橋美咲の人柄や立ち居振る舞い、話し方に大いに満足し、彼女を今後のビジネスパートナーに選んだことを全く後悔していないと感じていた。
やがて時間も遅くなり、高橋美咲は席を立って挨拶し、店を出ることにした。
外に出ると、どこかに座って九条蓮に電話し、迎えに来てもらおうと思っていた。
ところが突然、体に力が入らなくなり、全身から力が抜けていくような感覚に襲われ、拳を握ることすらできなくなった。
高橋美咲は困惑しながら目を細め、必死に拳を握りしめた。
その脱力感はますます強くなり、手に持っていたバッグを落としそうになり、椅子から立ち上がることもできなくなった。
これは明らかにおかしい。
今夜は簡単な食事と少しのお茶しか口にしていない。お酒も飲んでいない。
高橋美咲が不審に思い始めたその時、思いもよらない人物が目の前に現れた。
「高橋美咲、あんたにもこんな日が来るなんてね!」嘲りの笑みとともに響いたその声。目の前の女は高橋美咲を見下ろし、目には憎悪が溢れ、今にも高橋美咲を八つ裂きにしそうな勢いだった。
高橋美咲の目に冷たい光が宿り、自分が罠にはめられたことを確信した。
必死に顔を上げて相手を見やると、そこに立っていたのは、あの桜井奈緒だった。
しばらくぶりに見る桜井奈緒は、ひどくやつれていた。目の下にはクマができ、頬もこけて、明らかに以前より痩せている。最近、相当苦しい生活を送っていたのだろう。
着ている服も質素で、ごく普通のものだった。
高橋家の令嬢という肩書も、九条悠真の後ろ盾も失った桜井奈緒の暮らしは、急激に転落したに違いない。
高橋美咲が桜井奈緒を見つめている間、桜井奈緒もまた高橋美咲を睨みつけていた。
その目は狂気と怨念に満ちており、もし視線で人を殺せるなら、高橋美咲はすでに何度も命を落としていただろう。
桜井奈緒の姿を見た瞬間、高橋美咲の表情は一気に険しくなった。
前回の記者会見で桜井奈緒の不倫が暴かれて以来、彼女は姿を消していた。あの時、高橋美咲は九条悠真が密かに桜井奈緒を始末したのだと思っていたが、まさかまたこうして毒蛇のように現れるとは。
一体いつ仕掛けたのか。
高橋美咲は冷たく言い放つ。「桜井奈緒、何をするつもり?」
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