Chapter 490
九条社長の恋人は誰?(続き)
神谷海斗は血を吐きそうになった。殺されても、いつか九条蓮がこんなふうになるとは想像できなかっただろう。
これは本当に、自分の知っている九条蓮なのか?
神谷海斗はふとあることを思い出し、尋ねた。「あの日はどうだった? 高橋さんに怪しまれたか?」
九条蓮は顔も上げずに言った。「いや」
九条蓮がスマートフォンに夢中で、相手をする暇もなさそうなのを見て、神谷海斗は仕方なく一人で傍らのお茶を飲んだ。
九条蓮は長い指をスマートフォンの上で動かし、高橋美咲へ返信した。「頑張れ! 倉本隆氏も、きっと君を気に入る」
高橋美咲は驚いた。「どうして分かるの?」
九条蓮の瞳がわずかに暗くなり、さらに返信した。「倉本隆夫人は皇彩堂アカデミーの教授だ。倉本隆氏は、皇彩堂アカデミーの学生を高く評価している」
だからこそ、九条蓮はこれを第二次選考の課題に選んだのだ。
表向きは非常に難しく見えるが、実際には高橋美咲が無事に勝てるよう、ひそかに便宜を図っていた。
メッセージを読んだ高橋美咲は驚いた。まさか、そんな事情まであるとは本当に思わなかった。
これならメゾン・ヴェルヌのほかの候補者に比べ、自分だけ切り札を与えられたようなものだ。
九条蓮が教えてくれなければ、自分も知らないままだっただろう。それなら、これは九条蓮が自分のためにコネを使ったことになるのだろうか?
ベルタ・ジュエリー社内では、今も各社による緊迫した交渉が続いていた。
次々と企業が会議室へ入り、自社の方針を説明していった。メゾン・ヴェルヌより二つ前の順番は、佐伯葉月が率いる佐伯グループだった。彼女は中へ入ると、かなり長い時間をかけてから戻ってきた。
彼女が出てくると、皆はすぐその顔に目を向けた。表情から、倉本隆氏の評価を得られたかどうか読み取ろうとしているかのようだった。
佐伯葉月の唇には、かすかな笑みが残っていた。先ほどの結果がかなり良かったのは明らかだ。
皆はひそひそと話し始めると同時に、いっそう緊張を募らせた。
ほどなくして、メゾン・ヴェルヌの候補者たちの番になった。
前回の一次審査でかなりの者が落とされ、今残っているのは5人だけだった。高橋美咲と柳小路のほかは、普段からメゾン・ヴェルヌで目立った活躍をしている、実力のある3人だった。
5人はそろって会議室へ入った。
倉本隆氏は中央に座っていた。年齢は50代から60代ほどで、こめかみには白髪が交じっている。血色はよく健康的で、全体としてとても穏やかそうな人物だった。
彼の視線は、目の前に並ぶメゾン・ヴェルヌの従業員5人の顔を一人ずつたどり、最後に高橋美咲へ止まった。一目で彼女だと分かったようだった。
倉本隆氏は唇をわずかに上げ、かすかな笑みを見せた。
柳小路は高橋美咲のすぐ隣に立っていた。倉本隆氏が何度もこちらを見て、しかも自分に微笑みかけているのを見ると、すべて九条社長が手配してくれたのだと即座に思った。
もともと、なぜこのような選考が用意されたのか少し不思議に思っていた。だが倉本隆氏を目にした瞬間、何が起きているのかすぐに理解した。
これほど目立たない形で便宜を図ってくれたのだ。自分が勝てば、メゾン・ヴェルヌでもさらに信頼を得られる。
九条社長は、本当に自分によくしてくれる!
倉本隆氏は少し長く見つめただけで、すぐに手を振り、穏やかな口調で彼女たちに言った。「皆さん、どうぞお掛けください」
柳小路は自信に満ちて席に着いた。九条社長がすでに倉本隆氏へ話を通していると、今や完全に確信していた。あとは普段どおりに受け答えするだけで、最後の勝利は自分のものになる!
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