Chapter 49
夫がもうすぐ帰ってくる
「今すぐ出ていって。さもないと警察を呼びます!」高橋美咲は冷たい表情で言い、数歩後ずさって距離を取った。
「九条悠真に捨てられた女だって聞いたけど、あいつとはできて俺とはダメなのか?俺だって負けてないぞ?」柏木健人は嘲るように言った。
彼は鼻で笑った。九条悠真の婚約者まで寝取ったことがあるのに、高橋美咲が今さら清純ぶる理由なんてない。どうせ九条悠真に使い古された女だろう。
柏木健人の言葉に、高橋美咲は吐き気を覚えた。
「近寄らないで。夫がもうすぐ帰ってくるから。」九条蓮の存在をちらつかせて柏木健人を牽制した。
だが柏木健人が信じるはずもない。桜井奈緒から、高橋美咲は九条悠真に捨てられたばかりだと聞いていた。夫がいるなんて、ありえない。
どうせ嘘だ。ずる賢い女だ。
高橋美咲は美人だし、たとえ“訳あり”でも一度は味わってみたい。だから桜井奈緒の頼みを引き受けたのだ。
金ももらえて女も抱けるなんて、こんなうまい話は他にない。
「ここは郊外で住人も少ない。いくら叫んでも誰も助けに来ないぜ。むしろ楽しんでると思われるだけだ。もう抵抗するなよ!」
そう言いながら、柏木健人は服を脱ぎ始め、高橋美咲に飛びかかった——
「やめて!」高橋美咲は身をかわした。
体にはまだ包帯が巻かれていて、動きも鈍い。柏木健人はすぐに彼女の手をつかみ、力任せに引き寄せた。
柏木健人は高橋美咲をソファに押し倒し、スマホを取り出して動画モードにし、テーブルの上に置いた。そしてベルトを外し始めた。
柏木健人がベルトを引き抜いたその瞬間、突然部屋のドアが勢いよく開いた。
次の瞬間、誰かが強烈な蹴りを浴びせ、柏木健人を吹き飛ばした!
柏木健人は背後のテーブルに激突し、ものすごい音を立てた。
内臓が潰れるかと思うほどの衝撃で、床に倒れ込んだ柏木健人は腰を押さえ、苦痛に顔を歪めて起き上がることもできなかった。
九条蓮は険しい表情で、堂々とした足取りで近づいてきた。
部屋の明かりが彼の頭上に降り注ぎ、端正で気高い顔立ちを一層際立たせていた。
間一髪で現れた九条蓮の姿に、高橋美咲はまるで救世主を見たような気持ちになり、目に涙が浮かんだ。
本当に、来てくれてよかった!
もし来なければ、柏木健人と死ぬ気で戦うしかなかったかもしれない。
九条蓮は高橋美咲をソファから助け起こし、ずり落ちた服を肩にかけ直してやった。
「もう大丈夫。俺がいる。」低く響く声がした。
高橋美咲の心が震え、全身に温かいものが流れ込んだ。
九条蓮がそばにいれば、どんな困難も彼が全部解決してくれる、空が落ちてきても彼が支えてくれる——そんな絶対的な安心感に包まれた。
「お、お前……まさか……」柏木健人は少し回復すると、九条蓮の顔に気づいた。
あの真壁直人が連れてきて自分をボコボコにした男だ!
まさか高橋美咲の部屋でまた会うとは。二人は一体どんな関係なんだ?
九条蓮は鋭い視線で柏木健人を睨みつけ、その冷たい眼差しに柏木健人は思わず身震いした。
ただの一般人のはずなのに、異様な威圧感があり、どうしても恐怖を感じてしまう。
九条蓮は柏木健人の前に立ち、長い脚で容赦なく蹴りつけた。
「汚らわしいクズが、俺の女に手を出すとは……」と、低く凄みのある声が響いた。
「うあっ!」柏木健人は胸を蹴られ、悲鳴を上げた。
もともと怪我をしていた柏木健人は、九条蓮の蹴りで血を吐き、もう一発でも食らえば死ぬかと思うほどだった。
「助けてくれ、助けてくれ!桜井奈緒だ。あの女に頼まれて……」柏木健人は胸を押さえ、何度も命乞いをした。
高橋美咲は、柏木健人が桜井奈緒に頼まれて自分の純潔を奪おうとしたと聞き、怒りで震えた。
あの女、本当に最低だ!
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