Chapter 488
どうして彼女がここに?
「ありがとう」高橋美咲はわずかに唇を上げて言った。「まだ始まったばかりよ。お祝いするには早すぎるわ。本当に最後まで勝ち抜いたら、その時に祝ってちょうだい」
森川茉莉は自信たっぷりに言った。「絶対に勝てます。その時は一緒にお祝いできるのを楽しみにしています!」
「分かったわ。勝ったら、ご馳走するわね」
……
ベルタ本社。
高橋美咲は森川茉莉を連れて、そのビルを訪れた。
二人は受付を済ませると、案内に従ってエレベーターで上階へ向かった。
目的の階に着き、エレベーターの扉がゆっくり開いた。
中にいる人々を目にした高橋美咲は、思わず驚いた。
昨日、森川茉莉から多くの企業がベルタを狙っているとは聞いていたが、これほどの人数だとは思わなかった。目の前でいくつもできている小さな集まりが、それぞれ1社なのだろう。数えてみると20社近くもあり、予想を上回っていた!
競争が激しすぎる……これでは勝ち目などあるのだろうか。今日は厳しい戦いになりそうだった。
ほどなくして、高橋美咲は人混みの中に見覚えのある姿を見つけた。
どうして彼女がここに?
そこにいたのは佐伯葉月だった!
白いワンピースをまとい、髪を柔らかく背中へ垂らし、上品で隙のない化粧をしていた。一挙一動から優雅さが漂っている。
高橋美咲が佐伯葉月を見つめていると、相手も気配を感じたのか、こちらへ目を向けた。
そして、高橋美咲がいることに少なからず驚いたように、ゆっくりと目を細めた。
少し考えると、高橋美咲はすぐに納得した。ベルタは名の知れた企業であり、東京で提携先を探しているのだから、佐伯家ほどの家がこの機会を逃すはずはない。
その時、周囲の企業の者たちはメゾン・ヴェルヌの一行を見ると、思わずひそひそ話を始めた。
「どうしてメゾン・ヴェルヌは急にあんな大人数で来たんだ? 数で押し切るつもりか?」
「違うよ。前にメゾン・ヴェルヌで騒ぎがあっただろう? 今は責任者を選んでいるらしい。この人たちは選考に参加している候補者で、提携をまとめた者を選ぶつもりなんじゃないか」
「くそっ、それじゃあこっちが不利じゃないか! 知っていたら、うちも何人かに分けて参加させたのに」
他社の者たちは悔しさのあまり腿を叩きそうになったが、資料はすでに準備済みで、今さらやり直すには遅すぎた。結局、受け入れるしかなかった。
一方で、メゾン・ヴェルヌの選考にも興味を持ち始めた。
誰かが言った。「九条インターナショナルの九条社長が、恋人の存在を公表したらしいぞ。その彼女が今、メゾン・ヴェルヌにいるんだって!」
「えっ、本当か?」
「誰だ? あそこにいる黄色い服の女性か?」
「青い服の人だと思うな」
皆が、九条社長の公表した恋人はどの女性なのかと推測し始めた。佐伯葉月たちは少し離れたところで黙ったまま、周囲の話に耳を傾けていた。
皆は九条蓮の恋人が誰なのか、いつまでも推測を続けていた。結局答えは分からなかったが、佐伯葉月は知っていた。
あの日、九条蓮は高橋美咲を九条家の大奥様の誕生日宴へ連れて行き、彼女が将来の妻だと発表するつもりだった。ところが、思いもよらぬ騒ぎが起き、佐伯葉月は人前でとんだ恥をさらしてしまった!
あの日の出来事を思い出すと、佐伯葉月の目に次第に暗い陰が広がった。
今すぐ高橋美咲のところへ行き、二度ほど頬を張ってやりたいくらいだった。
だが、彼女の立場ではそんなことはできない。それに、今の九条蓮は高橋美咲をとても気に入っている。軽率に高橋美咲へ手を出し、九条蓮の不興を買うわけにはいかなかった。
九条家の大旦那様のほうは、すでに押さえてある。あとは九条蓮の心をつかむだけだ。彼さえ手に入れれば、将来の九条夫人の座は自分のものになる!
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