Chapter 485
高橋美咲の母を傷つけた犯人
相沢翔の言葉を聞き、二人はようやく少し安心した。
この件で軽率に動いてはならない。時間をかけて待たなければならなかった。
同じ頃、病室の外には、目を暗くした黒川善が立っていた。
自分の用事を片づけ、高橋美咲の見舞いに来たところだった。まさか高橋美咲がすでに帰った後で、相沢氏と両親の会話を偶然耳にするとは思わなかった。
高橋恵の交通事故に、九条家が関わっていた?
当時の出来事は大騒ぎになり、その後、誰かが巨額の金を使って揉み消した。彼も高橋恵の交通事故については、ぼんやりと知っているだけで、実際に何が起きたのかまでは知らなかった。
もし本当に相沢氏の言うとおりなら……。
では……九条蓮は、高橋美咲の母親を傷つけた犯人ということにならないか?
高橋恵はまだ死んではいないものの、長年病床に横たわり、生ける屍とほとんど変わらなかった。そして母親のことで、高橋美咲は高橋家を出ざるを得ず、外でかなりの苦労も味わってきた。
どうやら九条蓮と争うことも、まったく勝ち目がないわけではないらしい。
真実が明るみに出た時こそ、高橋美咲が自分のもとへ戻ってくる瞬間だ!
黒川善は病室へ入らず、黙って背を向け、その場を離れた。
高橋美咲と九条蓮が東京へ戻ると、生活は再び軌道に乗った。
メゾン・ヴェルヌ、デザイン部。
今日は責任者の座を争う公開選考への、参加登録日だった。
高橋美咲は朝早くからメゾン・ヴェルヌへ行き、準備を整えた。以前は参加するかどうか多少迷っていたが、実際に申し込んだ以上、当然、全力を尽くさなければならない。
今回の競争は、三段階の選考方式を採る。第一段階は予備審査で、条件を満たさない者を全員ふるい落とす。後の段階からが本当の勝負だった。
高橋美咲がメゾン・ヴェルヌへ入ると、柳小路の周りに大勢が集まっているのが見えた。
皆が柳小路へへつらっていた。
「小路、この前、九条社長が大阪で独身ではないと発表したそうね。それって、あなたの立場を認めたということでしょう? 本当に幸せね!」
「そうよ。あなたは大阪へ行かなかったのに、九条社長は明らかにあなたをとても大切にしているわ!」
「今回の競争も、最後に勝つのは絶対あなたよ」
前回、加藤千尋は柳小路へ取り入ろうとして、高橋美咲に踏みつけられた。最近はおとなしくしていたが、柳小路が九条社長の恋人だと公表されると、たちまち自信を取り戻した。
高橋美咲を見る目にさえ、軽蔑が満ちていた。
今度こそ、必ず高橋美咲を叩き潰してやる!
「ねえ、皆聞いた? 高橋美咲は三日も休みを取ったのよ。きっとこの競争に備えて、陰で必死に準備していたんでしょうね。でも残念。今回は落とされる運命よ」
「努力したって何になるの? 今は人脈の時代よ。努力だけで成功できる時代が、いつあったというの?」
「ぷっ、本当にそこまで頑張ったのね。全部無駄になるのに!」
「そうよ。どのくらい準備できたのかしら。ちょっと気になるわ!」
九条家の大奥様の誕生日宴で九条蓮がしたことにより、九条社長の恋人と勘違いされた柳小路は、メゾン・ヴェルヌで皆の羨望を集める存在になっていた。
クイーンという高橋美咲の肩書きでさえ、柳小路には及ばなかった。何しろ、彼女は将来の社長夫人なのだ!
星々に囲まれる月のようにちやほやされながら、柳小路は高橋美咲を軽蔑するように一瞥した。
ここ数日、彼女は九条社長との関係を築くため、懸命に努力していた。出張だと聞けば、毎日食事や生活の様子を気遣っていた。まさか九条社長が実際には、九条家の大奥様の誕生日宴のため大阪へ戻り、その宴で彼女を正式な恋人として公表していたとは思わなかった。
その瞬間、柳小路は自分の立場が確固たるものになったと感じた。
唇の端に嘲るような笑みが浮かんだ。高橋美咲など、いったい何様のつもりだ!
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