Chapter 472
昔の恋人なの?
突然、佐伯葉月は何かを思いついたらしく、口元に嘲るような笑みを浮かべた。
高橋美咲を一瞥し、いぶかしげに尋ねた。「そういえば高橋さん、黒川家の当主とは本当に羨ましいほど親しいんですね。まさか昔の恋人同士だったんですか?」
もし元恋人で、今もつながっていて、しかも九条会長の診察にまで呼べるのなら……
二人の関係が単純でないことになる。
誕生日宴ではこの点を利用できなかった。だからこそ今、九条会長に、高橋美咲と黒川善の関係がただならぬものだと、しっかり気づかせなければならなかった。
「違うわ。ただの友達よ」
佐伯葉月はすべて見抜いたと言わんばかりの顔で言った。「高橋さん、隠す必要なんてありませんよ。元恋人が一人や二人いたって、恥ずかしいことじゃないでしょう。今は二十一世紀です。結婚して離婚したって、大したことではありませんし……」
つまり、高橋美咲と九条蓮の結婚など、大したものではないとほのめかしたいのだ。
高橋美咲が口を開くのを待たず、佐伯葉月は続けた。「でも、高橋さんと黒川家の当主が以前お付き合いしていたとは思いませんでした。だから例外として診察を引き受けてもらえたんですね。普通の人には、そんな力ありませんもの」
高橋美咲が何も認めないうちから、佐伯葉月はすでに、高橋美咲と黒川善を元恋人同士と決めつけていた。
話しながら、九条蓮の表情を観察した。
自分の女が今も別の男と関わっているのを気にしない男など、いるはずがない。まして九条蓮ほど優秀な男なら、自分の女には一人の男だけを想い、過去まで完全に潔白でいてほしいはずだ。
高橋美咲の目が冷たくなった。佐伯葉月がわざとやっていると、これでも分からないなら盲目も同然だ。
冷たい声で言った。「佐伯さん、ご期待に沿えず残念ですが、私と黒川善の関係は、あなたが想像するほど複雑ではありません。心が汚れている人だけが、普通の人とは違う角度から物事を見るんです」
佐伯葉月の顔が沈んだ。高橋美咲は面と向かって自分を侮辱する気?!
すぐに感情を抑え、傷ついた表情を作り、落ち込んだ声で言った。「高橋さん、気にしないでください。過去を詮索するつもりはなかったんです。違うとおっしゃるなら、違うんでしょう」
その言い方では、高橋美咲が過去を隠すため、恥ずかしさと怒りから逆上して彼女を罵ったように聞こえた。
それを聞き、九条会長は唇を固く結んだ。
確かに――高橋美咲は、どうやって黒川善を呼んだのだ?
自分が人を遣わして頼んでも、無理だった。それなのに高橋美咲の方が自分より力があるというのか?
そうでなければ、佐伯葉月の言う通り、高橋美咲と黒川善には本当に曖昧な関係があるのかもしれない!
九条会長はもともと高橋美咲をあまり気に入っていなかった。彼女が別の男とそんな関係にあるらしいと知り、たちまち顔色を悪くし、探るような目を高橋美咲へ向けた。
空気がひどく張り詰めたその時、突然、戸口から声がした。
「お嬢さん、美咲と私は本当に仲のいい友人です。ですが、彼女のために九条会長の診察を引き受けたわけではありません」
その声を聞き、皆が振り向いた。
戸口には、白衣姿の黒川善が背筋を伸ばして立っていた。先ほどの会話を、はっきり聞いていたようだ。
彼は部屋の中へ入ってきた。
黒川善を見ると、九条会長の表情は少し和らいだ。
今後も治療を頼らなければならないのだから、当然、彼に不機嫌な態度を見せるわけにはいかない。
九条会長は尋ねた。「黒川家の当主、高橋美咲のためではないと言うなら、なぜ突然考えを変えたのだ?」
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